インド会社法改正とCSR

8月上旬にインドでは会社法が50数年ぶりに改正され、企業の社会的責任(CSR)に関する項目が追加されました。以前のブログでも紹介したように、一定規模以上の企業にCSR委員会の設置等(独立したメンバーが最低一人以上)を義務付けるとともに、前年純利益の2%をCSR活動に支出することを求めています。

法律制定を受け、管轄するMinistry of Corporate Affairs (企業省)の大臣が、Google Hangoutで、企業関係者やNGOと本改正内容におけるCSRについて約1時間の対話している状況がユーチューブで公開されています。 続きを読む

SASBのヘルスケアのガイドライン発行:秋には金融業界の予定

業界別のESG開示ガイドラインを開発している、米国のサステナビリティ会計基準審議会(SASB)からヘルスケア業界(6分類)の暫定ガイドラインが発行されました。バイオテクノロジー、医薬品、医療機器、医療サービス(デリバリー)、医薬品販売、マネージドケアの6分類です。

こちらから登録するとダウンロードできるようになっています。

その他の業種でも検討が進められており、今後のガイドラインの開示日程や活動計画によると、今年11月には金融業界のガイドラインが開示されるようです。

SASBの動きは、企業の非財務報告の位置づけを財務報告のように業界内で比較可能にしていこうという重要な動きの一つです。

今回のヘルスケア業界のガイドライン発行にあたっても、米国の証券取引委員会(SEC)ルールに基づく上場企業の財務報告10-Kレポートの中に開示する事例の紹介もされています。まだ全体的に試行段階ですが、各業界の基準策定には主要企業が参加していることから、少なくとも米国では徐々にデファクト・スタンダードになっていくことも予想されます。

持続可能性報告・CSR報告のガイドラインであるGRIのG4の重要性に関する考え方を踏まえても、CSR/IR/広報関連に加え、各項目の該当部門との連携がより重要になってくるでしょう。今年はCSR関連のガイドライン変更などが続いて大変ですが、これから年末に向けて統合報告のガイドライン開示も予定されており、担当部門の方は、しばらく新たな情報収集が忙しくなりそうですね。

SASBの活動等については、過去のブログに概要を記載していますのでご参考まで。

投資家から見たCSRレポート

GRIの新たなガイドラインG4の発行や、今年末に予定されている統合レポートのガイドラインなどの方向性を受け、CSRレポートの改定や、環境報告書(環境・社会報告書など)の内容や構成の見直しを検討している企業が増えているのではないでしょうか。

企業価値に占める無形資産の割合は、過去30-40年で大きく増え、企業価値の8割が無形資産から評価されるようになってきています。一方、従来型の財務報告では、十分に無形資産が説明・開示されていないため、CSRレポートをはじめとする非財務情報の重要性は増しています。

欧州の投資家からみた非財務報告書の現状や課題、期待するものについてまとめられた報告書が公表されました。投資家に対しても評価されやすいCSRレポートを作成するのに参考になりそうです。

報告書では、現状の非財務報告は不十分であるというメッセージが一貫して示されていますが、そのなかでも非財務報告として「最も参考にするのは、各社のCSRレポート」ということで、統合レポートなどが定着するまで当面は、CSRレポートは重要な情報源であることは間違いなさそうです。

また、本調査によると、欧州委員会が今年4月に発表した非財務報告の義務化法案に記載されている内容に加えて、以下の内容を開示することを期待しているとのことです。
(欧州委員会の非財務報告義務化については、こちらをご参照ください) 続きを読む

不動産の責任投資とESG

週末の日経ヴェリタスに欧米年金基金からの投資マネーを獲得するために、国内のREITや不動産会社でESG評価を受ける会社が増えているという記事がでていました。グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク(GRESB)2013年は、昨年の24社から30社強に広がる見通しということで、海外での責任投資の動きが国内の不動産市場にも広がりつつあるようです。国土交通省での紹介資料はこちらにあります。

このGRESBの地域別参加会社は欧州が過半を占めているように、2009年から欧州で始まった民間の枠組みのようですが、GRIやCERESなどグローバルな組織や、グリーンビルディングカウンシルなど米国やオーストラリアの組織も参画しています。

2013年の調査内容(Survey)をみると、環境面では、エネルギー利用、水利用、廃棄物、土壌汚染のほか、米国で課題となっているカビ(Mold)などのリスク管理項目や、スマートグリッドの導入割合、サプライヤーや工事請負会社のサステナビリティに関する状況などが調査項目に入っています。エネルギーのパフォーマンス項目だけで18項目あり、全体では20ページのアンケート調査ですので回答そのものもたいへんそうですが、物件毎の個別要素が強い不動産全体の状況が把握できれば、投資や管理する側としても新たな発見や評価軸もでてくるのではないでしょうか。

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インドの会社法改正法案とCSR

今週は国会が閉会し、環境関連では、放射性物質を大気汚染防止法や水質汚濁防止法の規制に含める法案などが成立しました。*環境省関連の法案制定状況はこちらから。

今年は、先月のGRI:G4に加え、統合報告ガイドラインも発行される予定となっており、法律だけでなく様々なCSRのルールが更新される予定となっていますが、アジアではCSRに関する法改正や制度変更の取り組みも活発になっています。

インドでは、昨年制定された上場企業への規制のなかで、上位100社に対して、今年度からCSR報告書の作成を義務付けられるようになっていますが、さらに、会社法を改正して一定規模以上の企業に対してCSRの推進を義務付ける方向性が具体化してきています。

昨年インドの下院を通過して、1956年以来の大きな改正になるといわれているインドの会社法の改正版(The Companies Act 2012)では、一定規模以上のインド国内企業すべてに対し、社内にCSR委員会を設置してCSR方針を制定して開示し、毎年、前年の純利益の2%をCSR方針に沿った環境保全、機会均等、教育などの取り組みに使うことを求めており、その支出の実行ができない場合には理由を開示することとしています。

今年度末頃まで上院を通過して制定する方向という見方もあり、改正法が制定されれば、インドで活動する国内外企業へ一定の影響がでてくるといわれています。法案はこちらの135 Corporate Social Responsiblityの項目などに記載されています。

海外グループ会社がある場合や今後の進出予定、主要なサプライヤーの評価など、関連業務がある方々は当面注視が必要になりそうです。

 

 

 

 

 

GRI G4によるCSR情報の経営上の意味—重要(Material)情報の開示に向けて

GRIの新たなガイドラインG4では、ガバナンスやサプライチェーンなど、開示項目の拡充だけでなく、開示するCSR情報の重要性(Materiality)について重点が置かれており、CSR情報の経営上の位置づけについて、改めて留意する時期にはいってきたといえそうです。

G4では、各社が自社の事業にとって重要性の高い項目を選定して報告する形となっています。重要性が高い情報は開示し、重要性が高くない情報は開示する必要はないという仕組みになっています。このため、重要性を評価するための指針が、260ページ超のマニュアルの160ページにわたり項目別に記載されています。

ここで企業が自社にとってMaterial (重要な)項目を評価し、開示することに伴う、CSR情報の経営上の意味について考えてみたいと思います。

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