4月初めに、アメリカの石油化学企業と司法省・環境保護庁との間で、アメリカの環境浄化対策で史上最高額の和解が成立したというニュースがありました。
国際会計基準
座談会特別編:第1回と次回に向けて(参考ニュース)
先週開催させていただいた土壌汚染に関する座談会では、3時間にわたって大変楽しく、課題や現状認識について活発な議論を行うことができました。土壌汚染に関わる様々な分野(環境コンサル、建設、法務、不動産、鑑定、産業界、金融、会計、メディア、大学等)の第一人者の方々に事前ご意見も頂き、重ねて御礼申し上げます。
業務や専門の立場が異なっても、同じように課題を感じている点として以下のような論点がでました。 続きを読む
SASB_エネルギー資源部門のドラフト開示
欧州議会で非財務情報の開示義務法案が承認
昨日の欧州議会で、環境・社会・労働側面やガバナンスなどの企業の非財務情報の開示を義務付ける提案が承認されました。
従業員500名以上の大企業や上場企業に、情報開示の拡充を義務付ける方向で、今後、国際的な指標などを踏まえて、開示拡充に向けたガイドラインなどが策定されるようです。さらに2018年以降は、大企業の国別の税額・利益・補助金などの開示を義務付けるかどうかも検討することが追記されています。
企業経営の大きな方向性ではありますが、企業にとっては、これまでと違う種類の情報を開示することになりますので、大変な時代になりつつあります。
持続可能性報告と財務報告の一体化に向けて
サステナビリティ報告、CSR報告書と財務報告の一体化となる統合報告に向けた動きは国内でも進んでいますが、先週、欧州で財務責任者(CFO)が持続可能性に向けて議論するCFO(財務責任者)の会が発足しました。
イギリスのチャールズ皇太子のもとで、大手企業10数社のCFOが集まり、今後、環境や社会面の課題解決やビジネスをどのように企業戦略や財務報告に結びつけるかという議論を進め、統合報告や自然資本に関する具体的なガイドラインの作成などに取り組むとのことです。
今後1年での実施事項は以下の通りとなっています。
- 資本的支出の評価に持続可能性の視点を入れるなど、意思決定の透明化に向けたガイドラインの作成
- 自然資本、社会資本の評価や計測の方法の開発に向けた貢献
- 持続可能なビジネスモデルに関する投資家の関わりの改善
統合報告や自然資本の動きも踏まえてか、または政策的な影響の大きい公益事業のためか、水やユーティリティ、不動産関連などインフラ系企業が多い印象です。メンバーにはイギリス企業だけでなく、フランスのダノンやアメリカのWalmart等も含まれています。
日本では、環境報告→CSR報告→統合報告と徐々に移行している企業が多いなか、現状では、CSR報告書を複数部署で作成している企業が多いと思われます。財務責任者がCSRや環境・社会面の開示について考える会というのは、まだあまり聞いたことがありません。
少し先のことのように思われますが、CSR報告と財務報告が本当の意味で統合するためには、やはり財務責任者の見方は非常に重要で、それによって初めて本当の意味の持続可能なビジネスになるのでしょう。イギリスではこの動きに本格的に取り組んでいるという見方ができそうです。
自然資本の政策への組み入れを承認したイギリス議会
先週、イギリス議会は、自然資本(Natural Capital)を今後、国の政策や会計等に組み入れる方向を固めたようです。議会の議論については公開されています。
自然資本は、水や土壌、エネルギーなどの自然資源の価値を評価し、それらを保全しながら、経済社会の中で持続的に活用していくことを目指しています。そのために、まず自然資本の実態をきちんと把握し、評価する枠組みを確立することが提唱されています。こうした取り組みを支持する世界の約50の金融機関が自然資本宣言(Natural Capital Declaration)を採択しており、日本では三井住友信託銀行が参加しています。
次回座談会
セミナーを受けて、座談会を継続的に実施することになりました。
次回の座談会は”オバマ政権の環境規制改革”についてです。
オバマ政権は、大統領令のもと古い規制を撤廃し、21世紀型の柔軟な効果的な規制に変革することを目指して、様々な規制改革を打ち出してきました。環境規制では、2011年に大方針とともに35の主要な環境規制改革分野を打ち出し、進捗状況を公表しています。アメリカの環境規制改革をネタに、楽しくかつ新しい日本のビジネスについても意見交換させて頂ければと思っております。
なお、座談会に参加ご希望の方はこちらよりご登録ください。詳細についてご案内させて頂きます。
セミナーで配布した環境デューデリジェンス・ガイドブック(Web版)を掲載致しました。主要各国の法令やデューデリジェンスのポイント、財務報告における開示推奨事項や会計基準などのリンクを紹介していますのでご活用ください。
SASBのヘルスケアのガイドライン発行:秋には金融業界の予定
業界別のESG開示ガイドラインを開発している、米国のサステナビリティ会計基準審議会(SASB)からヘルスケア業界(6分類)の暫定ガイドラインが発行されました。バイオテクノロジー、医薬品、医療機器、医療サービス(デリバリー)、医薬品販売、マネージドケアの6分類です。
こちらから登録するとダウンロードできるようになっています。
その他の業種でも検討が進められており、今後のガイドラインの開示日程や活動計画によると、今年11月には金融業界のガイドラインが開示されるようです。
SASBの動きは、企業の非財務報告の位置づけを財務報告のように業界内で比較可能にしていこうという重要な動きの一つです。
今回のヘルスケア業界のガイドライン発行にあたっても、米国の証券取引委員会(SEC)ルールに基づく上場企業の財務報告10-Kレポートの中に開示する事例の紹介もされています。まだ全体的に試行段階ですが、各業界の基準策定には主要企業が参加していることから、少なくとも米国では徐々にデファクト・スタンダードになっていくことも予想されます。
持続可能性報告・CSR報告のガイドラインであるGRIのG4の重要性に関する考え方を踏まえても、CSR/IR/広報関連に加え、各項目の該当部門との連携がより重要になってくるでしょう。今年はCSR関連のガイドライン変更などが続いて大変ですが、これから年末に向けて統合報告のガイドライン開示も予定されており、担当部門の方は、しばらく新たな情報収集が忙しくなりそうですね。
SASBの活動等については、過去のブログに概要を記載していますのでご参考まで。
国際会計基準と環境債務の動向
国内での国際会計基準の強制適用は当面見送られ、任意適用の範囲を広げる方向という報道があり、金融庁からも任意適用に関する報道情報がだされました。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/soukai/20130528.html
数年前の国際会計基準との収斂では、資産除去債務に関する環境関連の費用をどのように認識・計上するか課題もありましたが、すでにルールが定着している米国内では、現在も国際会計基準との関連で、環境関連の費用認識や開示が今後どのように変わるかという議論が継続的にフォローされています。
結論からいうと、米国では当面(今後数年間は)、国際会計基準との関連で、米国内の環境債務の開示などに関する必要事項が変わる可能性は低いとみられているようです。
http://www.americanbar.org/content/dam/aba/publications/nr_newsletters/ed/201212_ed.authcheckdam.pdf