インド会社法改正とCSR

8月上旬にインドでは会社法が50数年ぶりに改正され、企業の社会的責任(CSR)に関する項目が追加されました。以前のブログでも紹介したように、一定規模以上の企業にCSR委員会の設置等(独立したメンバーが最低一人以上)を義務付けるとともに、前年純利益の2%をCSR活動に支出することを求めています。

法律制定を受け、管轄するMinistry of Corporate Affairs (企業省)の大臣が、Google Hangoutで、企業関係者やNGOと本改正内容におけるCSRについて約1時間の対話している状況がユーチューブで公開されています。 続きを読む

ASTM フェーズ1改訂に対する環境保護庁の方針(案)公表

環境デューデリジェンスとしてよく活用されている米国材料検査協会(ASTM)の環境サイトアセスメント E1527-13について、米国連邦環境保護庁(EPA)が先週、連邦官報を発行し、今後の方向性について方針案を公表しました。

ASTMのE1527(環境サイトアセスメント:フェーズ1)は、アメリカのスーパーファンド法に基づく調査(すべての適切な質問、All Appropriate Inquieries, AAIs)と連動している重要な調査です。具体的には、この調査を実施し、汚染懸念がないうえで購入・投融資した場合、その後に汚染が発覚しても連帯責任を受けないように抗弁できる条件になります。このため、連邦官報にも影響のある業種として不動産、銀行、保険、環境コンサルティングなどが記載されています。また、2002年に制定されたブラウンフィールド法(小規模事業者の責任免除とブラウンフィールド再活性化法)の補助金などを受ける要件にもなっています。

ASTMのE1527は、現在2005年版が採用されており、いくつかの主要な変更を経て13年版として更新される予定ですが、これについてEPAがどのような方針を打ち出すかが注目されていました。

先週公表された方針案では、ASTMフェーズ1調査の13年版をAAIsとして認める一方で、AAIsとして、旧来の05年バージョンの活用も認めるというものとなっています。9月15日までのコメント期間に反対意見がなければ、11月からこの案が採用されるということで、今後1か月のコメント状況によるようですが、一部の環境業界ではBad Newsとして受け止められています。

ASTM E1527-13の改定内容については以前のブログをご参照ください。

なお、本情報については、9月に開催する環境デューデリジェンスセミナーでも概要をご紹介させて頂きます。
また、今月初めに50年以上ぶりに改訂され、CSR活動の義務化が明記されたインド会社法の概要についても、事例とともにご紹介する予定です。

 

 

 

住宅の環境リスク調査(考)

たまたま見ていたテレビで、今朝紹介されていた新潟県の住宅で石油が流出したというニュースがありました。個人宅では、対応できないレベルの大変なケースですが、そろそろ日本でも住宅での環境リスク調査(また公的保険的な枠組み)の必要性が高まっているのだなと感じました。

以前のブログで紹介していますが、アメリカの住宅取引のフォーマットには、土壌汚染の調査に加え、地下タンクの有無、ラドン等の状況についても有無を記載することになっています。

イギリスでは住宅取引の8割以上で環境リスク調査が行われています。オランダでは全土で土壌汚染マップを整備し、不動産取引の際には参照することが慣例化しています。

既存の住宅における今回のような案件をどのように扱うのかは、別途検討が必要ですが、多くの住宅では、環境リスクの調査をしないまま取引されています。今後、適切な調査を実施した場合の免責や、一定の公的基金から公的補助や低利・無利子融資を受けられるようにする仕組みが必要になってきているのではないかと改めて考えさせられます。 続きを読む

ホームページを更新しました

弊社ホームページを更新しました。

9月26日に開催するセミナー情報については、 随時アップデートします。

ご関心がある方には、パンフレットができましたらご送付致しますので、こちらまでご連絡ください。

≪海外の環境デュー・デリジェンス・セミナー≫(参加費無料)

日時:9月26日(木)14時から16時30分(予定)

場所:弊社オフィス(東京:浜松町)

 

 

セミナー開催のお知らせ≪海外の環境デューデリジェンス≫

9月26日(木)午後、弊社オフィス(東京:浜松町)にて、”海外の環境デュー・デリジェンス・セミナー”を開催致します。(SGSジャパンさんとの共同開催です。)

海外進出や海外拠点の再編の際には、土地や施設の環境リスク調査、コンプライアンス調査は不可欠です。

アジアではこの数年、環境規制の法制化・厳格化が進んでいるほか、土壌汚染については、日本と異なった法的責任を課している国がほとんどです。土壌汚染については、影響も大きいため、土地の購入時だけでなく、工場のリース時にも調査を実施し、契約上のリスク管理をすることが重要です。

セミナーでは、国内外の環境リスク対策のためにどのような対応をとる必要があるのか、事例を踏まえてご紹介します。ご関心がある方には、パンフレットはこちらからご確認ください。

 

産業用地の土壌汚染発生率:日米でほぼ同じ

数十年にわたり化学物質などを使用して操業していた工場で、土壌汚染があるかどうかは、国が違っても大きな違いはないようです。

6月に参加したアメリカの会議では、米国の製造・サービス業などで、設備・施設別に、操業年と土壌汚染の関係を調査した研究結果が紹介されました。

調査目的のひとつは、”操業の長さと汚染の発生率に相関関係はあるのか”というものでした。つまり、長く操業している工場には土壌汚染がある可能性が高いのか、という問題提起です。有害物質を使用していた工場などでの汚染発生確率は、施設の種類別に若干相違があるものの、だいたい50-70%(基準超えは30-50%)という発表でした。

また、操業期間と土壌汚染の発生率との相関関係はあまり明確にはでていないという考察でした。(地下水汚染については操業期間の長さが影響するという結果がいくつかありました。)この調査は、比較的小さな統計母数でしたが、土壌汚染の発生確率について、日米でほぼ同じくらいの確率になっているのは興味深いものでした。

日本で同じ目的の研究はみていませんが、日本のデータとしては、土壌環境センターで資料調査後(つまり有害物質を使用していた履歴などがあることが確認された後)に実施された土壌調査では、基準を超える汚染が発覚する可能性は50-60%程度です。(これについては、数値だけの紹介ですが、以前の講演資料に入れています。)

また、以前環境省のブラウンフィールド調査で実施されている、都市計画地域の用途別に東京都のデータをベースにした土壌汚染の発生確率では、工業専用地域では約35%となっています。

発生確率が高いかどうかについては、いろいろな見解があると思われますが、むしろ残りの3-4割にあたる工場では、長年にわたり操業を続けながらも汚染が発覚しなかったことは有益な数字であるように思います。

続きを読む

バングラデシュ惨事後の対応:欧米それぞれに

4月のバングラデシュの建物倒壊事故後、欧州企業が5月に今後の対応に関する同意を発表しましたが(以前のブログご参照)、先週アメリカ企業が”The Alliance for Bangladesh Worker Safety“と呼ばれるアライアンスを発表しました。

GAPやL.L. Beanなどの衣料品ブランドのほか、Sears やMacy、Nordstromなどのデパート、Walmart等に加え、カナダの企業や団体のほか、香港ベースの企業も参画予定としています。今後、バングラデシュの工場に対して年1回の監査をすることとしており、実施内容そのものは欧州のAccordと同じようですが、法的な位置づけではなく自主的な取り組みという形で推進しているところが、欧州のAccordとの相違だといわれています。 続きを読む

インドの会社法改正法案とCSR

今週は国会が閉会し、環境関連では、放射性物質を大気汚染防止法や水質汚濁防止法の規制に含める法案などが成立しました。*環境省関連の法案制定状況はこちらから。

今年は、先月のGRI:G4に加え、統合報告ガイドラインも発行される予定となっており、法律だけでなく様々なCSRのルールが更新される予定となっていますが、アジアではCSRに関する法改正や制度変更の取り組みも活発になっています。

インドでは、昨年制定された上場企業への規制のなかで、上位100社に対して、今年度からCSR報告書の作成を義務付けられるようになっていますが、さらに、会社法を改正して一定規模以上の企業に対してCSRの推進を義務付ける方向性が具体化してきています。

昨年インドの下院を通過して、1956年以来の大きな改正になるといわれているインドの会社法の改正版(The Companies Act 2012)では、一定規模以上のインド国内企業すべてに対し、社内にCSR委員会を設置してCSR方針を制定して開示し、毎年、前年の純利益の2%をCSR方針に沿った環境保全、機会均等、教育などの取り組みに使うことを求めており、その支出の実行ができない場合には理由を開示することとしています。

今年度末頃まで上院を通過して制定する方向という見方もあり、改正法が制定されれば、インドで活動する国内外企業へ一定の影響がでてくるといわれています。法案はこちらの135 Corporate Social Responsiblityの項目などに記載されています。

海外グループ会社がある場合や今後の進出予定、主要なサプライヤーの評価など、関連業務がある方々は当面注視が必要になりそうです。

 

 

 

 

 

シンガポールのエネルギーマネジメントシステムと電子報告

シンガポールで4月22日から施行されたエネルギー保全法(the Energy Conservation Act, ECA)により、同国内の170社、200の施設でエネルギー管理計画の策定し、エネルギー管理者を指名するとともに、エネルギー使用状況等を来年(2014年)から提出することが義務付けられるようになります。

日本の省エネ法に似た仕組みですが、エネルギー使用量などの報告は、同法の指定するオンライン報告システムのサイトに電子提出することとなっており、自社内のエネルギー使用・購入記録など保管記録があるデータについても、電子フォーマットでの記録でよいとされています。これによりエネルギーマネジメントソフトの導入も増えるのではないかいう見方も出ています。

分野や呼び方は様々ですが、アジアでも電子報告は広がってきていますね。

 

 

 

GRI G4によるCSR情報の経営上の意味—重要(Material)情報の開示に向けて

GRIの新たなガイドラインG4では、ガバナンスやサプライチェーンなど、開示項目の拡充だけでなく、開示するCSR情報の重要性(Materiality)について重点が置かれており、CSR情報の経営上の位置づけについて、改めて留意する時期にはいってきたといえそうです。

G4では、各社が自社の事業にとって重要性の高い項目を選定して報告する形となっています。重要性が高い情報は開示し、重要性が高くない情報は開示する必要はないという仕組みになっています。このため、重要性を評価するための指針が、260ページ超のマニュアルの160ページにわたり項目別に記載されています。

ここで企業が自社にとってMaterial (重要な)項目を評価し、開示することに伴う、CSR情報の経営上の意味について考えてみたいと思います。

続きを読む

1 8 9 10 11 12