持続可能性報告と財務報告の一体化に向けて

サステナビリティ報告、CSR報告書と財務報告の一体化となる統合報告に向けた動きは国内でも進んでいますが、先週、欧州で財務責任者(CFO)が持続可能性に向けて議論するCFO(財務責任者)の会が発足しました。

イギリスのチャールズ皇太子のもとで、大手企業10数社のCFOが集まり、今後、環境や社会面の課題解決やビジネスをどのように企業戦略や財務報告に結びつけるかという議論を進め、統合報告や自然資本に関する具体的なガイドラインの作成などに取り組むとのことです。

今後1年での実施事項は以下の通りとなっています。

  • 資本的支出の評価に持続可能性の視点を入れるなど、意思決定の透明化に向けたガイドラインの作成
  • 自然資本、社会資本の評価や計測の方法の開発に向けた貢献
  • 持続可能なビジネスモデルに関する投資家の関わりの改善

統合報告や自然資本の動きも踏まえてか、または政策的な影響の大きい公益事業のためか、水やユーティリティ、不動産関連などインフラ系企業が多い印象です。メンバーにはイギリス企業だけでなく、フランスのダノンやアメリカのWalmart等も含まれています。

日本では、環境報告→CSR報告→統合報告と徐々に移行している企業が多いなか、現状では、CSR報告書を複数部署で作成している企業が多いと思われます。財務責任者がCSRや環境・社会面の開示について考える会というのは、まだあまり聞いたことがありません。

少し先のことのように思われますが、CSR報告と財務報告が本当の意味で統合するためには、やはり財務責任者の見方は非常に重要で、それによって初めて本当の意味の持続可能なビジネスになるのでしょう。イギリスではこの動きに本格的に取り組んでいるという見方ができそうです。

 

マンション建替えに潜む隠れた問題

来年度の税制改正にマンション建替え推進に対する優遇税制が導入されるというニュースが報道されています。

現在、マンションストックは約600万戸あり、そのうち2割以上は1980年代以前に建てられており、旧耐震基準の問題が指摘されています。

ただ建て替えにあたってもう一つの課題は、土壌汚染問題ではないでしょうか。 続きを読む

エコチル調査

昨日富山大学医学部の先生から、環境省のエコチル調査についてお話を伺いました。全国10万人を対象に、母親と生まれてくる子供の環境影響などを分析する調査だそうです。

外部環境の影響については限定的な範囲に行われるようですが、どのような食べ物を食べたか、それによる子供の疾病率の影響などを長期的に詳細に調査し、化学物質の暴露経路が子供の発育や疾病にどのような影響をもたらしているのかを、調べていくもののようです。

最近、欧州では土壌汚染の健康影響などの調査が進んでおり、土壌汚染そのものからの健康影響はあまり明確でないという結果もでています。

”環境”分野はとても広いので、異分野の専門家の方々とお話しさせていただくと大変勉強になると同時に、様々な側面の研究が進んでいることを知り、とても新鮮に感じます。

調査研究によって、環境汚染の適切なリスク管理が進むと同時に、不安や心配も解消されるとよいですね。

 

 

ユーティリティ業界の将来図:5つのトレンドと6つの視点

先々週、海外の調査会社のWebinarがあり、アメリカ・欧州を中心とするユーティリティ業界の将来動向に関する大変興味深い議論がありました。

日本でも2016年からの電力自由化に続き、ガス事業の自由化の議論も始まっていますが、すでに自由化が進んでいる海外のユーティリティ業界では、今後も大きな変化が続くということです。

セミナーでは大きく以下5つのトレンドと6つの視点から、個別事例や英米オーストラリアなどの電力/ガス会社、エネルギーマネジメント・ソフトウエア、顧客アンケート結果等の紹介もありました。 続きを読む

ブラウンフィールド化進む国内と土壌汚染ビジネス

環境省が取りまとめている土壌汚染対策法の施行状況によると、11月1日現在、国内の形質変更時要届出区域(土壌汚染があるが、現在すぐに対策が求められるのではなく、形質変更時に届け出ることが求められる土地)は、913サイト、要措置区域(土壌汚染対策が求められる土地)は113サイトとなり、合わせて1,000サイトを超える状況となっています。

2010年の土壌汚染対策法の法改正前にあたる2009年度末には、指定区域が約200サイトだったことを考えると、3年半で5倍に増加している状況となっています。すべてのサイトが有効利用されていないわけではないと思いますが、形質変更にあたる、解体や改築などをしない、いわゆる未利用の建物や有効利用が進められていない土地もそれなりの割合になっている可能性があります。

土壌汚染対策が進まずにいることを反映しているためか、社団法人土壌環境センターが発表した昨年度の土壌汚染ビジネス市場は、2006年度のピーク時の半分以下の800億円に落ち込んでいる状況です。(今年度は不動産市況も活発になり、増加に転じると思われますが・・)

こうした中、欧州では土壌汚染対策に関する規制や、汚染土地の健康被害と今後の対応に関するいくつかの進捗が見られます。 続きを読む

環境・サステナビリティに関する実務教育

先週の座談会では、4時間余りにわたって国内外にわたる環境や持続可能性に関する楽しい議論をさせて頂きました。第一線で活躍されている、違った専門分野の方と同じテーマについて議論するのはとても勉強になります。

環境分野のソリューションは、各地域の自然環境や国の歴史文化、ビジネス慣行など、様々な要素を踏まえて成熟していっています。そのため、各国や各地域での違いもあります。そうした違いを知ることで、新たなビジネスのヒントや、現状のアップデートにつながるものもでてくるかもしれません。

今は環境関連の業務の大部分は、実務を通じて習得するOJTがほとんどですが、環境ビジネスに直接役立つ知識や知見を短期間に修得できる大学や実務教育の場が日本にもっとできてもよいのではないかというご意見もありました。

ちょうど、一昨日、米投資銀行モルガンスタンレーがInstitute for Sustainable Investment (持続可能な投資に関する研究機構)を設立したという発表がありました。 続きを読む

自然資本の政策への組み入れを承認したイギリス議会

先週、イギリス議会は、自然資本(Natural Capital)を今後、国の政策や会計等に組み入れる方向を固めたようです。議会の議論については公開されています。

自然資本は、水や土壌、エネルギーなどの自然資源の価値を評価し、それらを保全しながら、経済社会の中で持続的に活用していくことを目指しています。そのために、まず自然資本の実態をきちんと把握し、評価する枠組みを確立することが提唱されています。こうした取り組みを支持する世界の約50の金融機関が自然資本宣言(Natural Capital Declaration)を採択しており、日本では三井住友信託銀行が参加しています。

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セミナーの御礼と今後の座談会について

昨日はSGSジャパン様と共同開催させていただいた海外環境デューデリジェンスセミナーにて多方面の皆様にお世話になり、ありがとうございました。第一部では藤井先生にたいへん貴重なご講演を頂き、国内環境デューデリジェンスのきっかけについて改めて勉強させて頂きました。また、第二部では、ロンドンオリンピック2012をベースにご参加の皆様の専門分野のもとで大変楽しく、かつレベルの高い意見交換をさせて頂きました。

ご参加いただきました方には重ねて心より御礼申し上げます。

ご専門が少しずつ違う皆様とお話しさせて頂くことで、いろいろなアイディアや既成概念にとらわれないお話が生まれることはとても素晴らしいことだと実感致しました。

引き続き、FINEVではこうした座談会を不定期または定期的に開催させて頂くことを検討したいと思っております。ご案内をご希望の方は、こちらからご登録頂ければ幸いです。

テーマとしては・・・

・海外でのオリンピック関連の環境・サステナビリティ

・海外・国内環境法制度

・海外・国内の環境・CSR関連の会計制度・財務報告

・海外・国内不動産関連

・海外・国内CSR/SRI/環境金融/環境保険等

・海外・国内の環境/CSR に関するITソフト

・シェールガス・オイルに関する動向(環境規制、不動産その他)

などを検討中です。ご登録の際に、ご関心のテーマがありましたら併せてお知らせください。
御礼に重ねて、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

 

≪環境デューデリジェンスセミナー≫のお知らせ

≪セミナーのアジェンダを更新しました≫

アジア各国ではこの数年土壌汚染関連の法制化が続いており、欧州や北米でも土壌汚染に関する法制度や実務は頻繁に改正が行われています。土壌汚染の法規制は、日本国内の規制と海外の法規制は大きくルールが異なっており、施設の占有者に対して調査や浄化責任が課されるケースや、それが遡及的に無過失、連帯責任となる場合もあります。このため、海外進出の際には、土壌汚染調査を含む環境デューデリジェンスを実施することがリスク管理上も不可欠になっています。

本セミナーでは、環境デューデリジェンスに関する主要な課題である土壌汚染の海外の法制度概要をご紹介し、どのような調査を実施し、その結果からどのように判断したらよいのかをご紹介します。

また事例では、土壌・地下水汚染だけでなく、廃棄物、大気汚染関連の規制を含めたコンプライアンス調査の留意点や確認事項をご紹介します。

 

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日  時:2013年9月26日(木)   14時00分~16時30分 (17時から第二部)

概  要:予定しているアジェンダは以下の通りです。

 

14:00-14:15    基調講演・・・・・上智大学大学院 地球環境学研究科 藤井良広教授

14:20-15:00  海外環境リスク関連法令の最新動向・・・・・㈱FINEV 光成美紀

日本、米国、欧州、東南アジア他の規制動向と日本との相違を解説。

ASTMフェーズⅠ調査改訂(2013)の動向やリスク管理の進め方をご紹介。

15:15-16:15  海外環境デューデリジェンス実施事例と体制について
                    ・・・・SGSジャパン㈱ 西利道、㈱FINEV 光成美紀

事例:産業施設のフェーズⅠ及びⅡ調査及びコンプライアンス調査のご紹介。

16:15-16:45  質疑応答

17:00-19:00  第二部:

        “ロンドンオリンピックの環境対策とグリーン/サステナブルなオリンピック”

 

場  所:株式会社FINEV(ファインブ) (会議室)

定  員:50名 参加者の方には“海外環境デュー・デリジェンスガイド(小冊子)”進呈

参加料:無 料(事前登録制)

*申込多数の場合には、次回以降のご案内をさせて頂くことがございます。

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ASTM フェーズ1改訂に対する環境保護庁の方針(案)公表

環境デューデリジェンスとしてよく活用されている米国材料検査協会(ASTM)の環境サイトアセスメント E1527-13について、米国連邦環境保護庁(EPA)が先週、連邦官報を発行し、今後の方向性について方針案を公表しました。

ASTMのE1527(環境サイトアセスメント:フェーズ1)は、アメリカのスーパーファンド法に基づく調査(すべての適切な質問、All Appropriate Inquieries, AAIs)と連動している重要な調査です。具体的には、この調査を実施し、汚染懸念がないうえで購入・投融資した場合、その後に汚染が発覚しても連帯責任を受けないように抗弁できる条件になります。このため、連邦官報にも影響のある業種として不動産、銀行、保険、環境コンサルティングなどが記載されています。また、2002年に制定されたブラウンフィールド法(小規模事業者の責任免除とブラウンフィールド再活性化法)の補助金などを受ける要件にもなっています。

ASTMのE1527は、現在2005年版が採用されており、いくつかの主要な変更を経て13年版として更新される予定ですが、これについてEPAがどのような方針を打ち出すかが注目されていました。

先週公表された方針案では、ASTMフェーズ1調査の13年版をAAIsとして認める一方で、AAIsとして、旧来の05年バージョンの活用も認めるというものとなっています。9月15日までのコメント期間に反対意見がなければ、11月からこの案が採用されるということで、今後1か月のコメント状況によるようですが、一部の環境業界ではBad Newsとして受け止められています。

ASTM E1527-13の改定内容については以前のブログをご参照ください。

なお、本情報については、9月に開催する環境デューデリジェンスセミナーでも概要をご紹介させて頂きます。
また、今月初めに50年以上ぶりに改訂され、CSR活動の義務化が明記されたインド会社法の概要についても、事例とともにご紹介する予定です。

 

 

 

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