CSR調達:バングラデシュ惨事後の安全対策の合意

バングラデシュのダッカ郊外の建物崩壊における犠牲者は1,100人を超え、建物の安全管理に関する課題を改めて考えさせられる惨事でしたが、欧米の衣料品ブランドをはじめとするグローバル企業によって検討されていた調達先への対策は、5月中旬に以下合意として発行され、現在では署名企業が40社を超えています。

合意された安全対策”Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh”では、署名企業の同国内の全サプライヤーを対象に、安全監査や対策の実施割合などを厳格に定めており、ILOやドイツ国際協力公社(GIZ)等と連携して同国の労働雇用省(Ministry of Labour and Employment of Bangladesh, MoLE)と共に、建物安全対策を推進していく内容となっています。

署名企業からも推察できるように、欧州系の企業が多くなっており、米国企業ではこの同意書には参画せず、別途自社内での取り組みを推進することなどが報道されています。

上記合意には具体的な数値割合なども含まれているため、経営や実務への影響も大きく、各社で異なる経営環境の中、短期間で合意するのは難しさもありそうです。

 

国際会計基準と環境債務の動向

国内での国際会計基準の強制適用は当面見送られ、任意適用の範囲を広げる方向という報道があり、金融庁からも任意適用に関する報道情報がだされました。

http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/soukai/20130528.html

数年前の国際会計基準との収斂では、資産除去債務に関する環境関連の費用をどのように認識・計上するか課題もありましたが、すでにルールが定着している米国内では、現在も国際会計基準との関連で、環境関連の費用認識や開示が今後どのように変わるかという議論が継続的にフォローされています。

結論からいうと、米国では当面(今後数年間は)、国際会計基準との関連で、米国内の環境債務の開示などに関する必要事項が変わる可能性は低いとみられているようです。

http://www.americanbar.org/content/dam/aba/publications/nr_newsletters/ed/201212_ed.authcheckdam.pdf

続きを読む

Social Hotspots

日本で、ホットスポットというとセシウムなど放射性物質の値が局所的に高い場所という印象が強いですが、サプライチェーンのCSR評価、CSR調達等における、社会面(労働や人権など)地域や業種の評価をする世界の”Social Hotspots Portal”がオープンしました。

http://socialhotspot.org/

このポータルでは、CSRの評価をする際の社会的側面の評価をするグローバルデーターベースを展開しています。ポータル・サービスを提供しているのは、アメリカ東部メイン州にあるNPO:Social Hotspots Databaseで、製品のSocial Life Cycle 分析に関するガイドラインを、国連環境計画とともに公表しています。
アドバイザリー委員会には、主要なCSR関連組織であるBSRやAccountAbility, SustainAbilityなどのほか欧米の大学の研究者、大手企業、EPAも入っており、賛同者が多いことが伺えます。エコラベル等のデータベースを提供する国際貿易センタ(ITC)とも戦略パートナー関係を締結しており、グローバル展開する調達先の環境・社会面のリスク管理に向けたインフラが整ってきているようです。

CSR報告書のガイドラインであるGRIの最新版G4でも、サプライチェーンの状況報告が拡充されることになり、今後こうしたデータベースを活用する機会も増えてくるのではないかと思います。

これらの情報を社内でどのように活用し、リスク管理につなげるかが課題になりそうです。

GRI G4発行

Global Reporting Initiative (GRI)のG4が発行されました。(以下からダウンロードできます。)

https://www.globalreporting.org/reporting/g4/Pages/default.aspx

パート1(90ページ超)、パート2(260ページ超)で、読み込むのにも時間がかかりそうです。

日本語訳の発行は、2014年1月の予定とのことです。

世界の廃炉

敦賀原発の今後の再稼働についての報道が続いていますが、世界各国では、原子炉の廃炉はどのような要因で行われているのでしょうか。

世界原子力協会のレポートによると、2013年時点で世界全体の原子炉の廃炉について、その要因別に分類すると、通常の経年や経済的な合理性に基づくものが101、事故によるものが11、そしてこのどちらにも該当しない政治的な決定によるものが25となるようです。このリストが以下のレポートにまとめられています。

http://www.world-nuclear.org/info/Nuclear-Fuel-Cycle/Nuclear-Wastes/Decommissioning-Nuclear-Facilities/#.UZlaC7VU-bM

続きを読む

GRI G4とCSR2.0 とマネジメント2.0

今週、CSR報告書のガイドラインとして世界で最も定着しているGlobal Reporting Initiative (GRI)の最新版:G4が公表される予定となっています。G4では、サプライチェーンの記載や企業の業務に応じたバリューチェーンに沿ったマテリアリティ(重要性)を踏まえた報告を重視する方向のようですが、開示項目が現状から大幅に増え100項目を超えることも予想されており、CSR業界でも様々な意見があるといわれています。

http://www.verdantix.com/blog/index.cfm/post/92

GRIはCSRの情報開示に関するガイドラインですが、企業の社会的責任(CSR)全般について、これまで比較的個別に、また事業に付加的なアプローチがされ、本質的には企業経営において重視されてこなかったという反省や評価も少なくありません。このため、たとえば上記にも紹介されている意見の一つとして、コカコーラ社からは、CSR報告書は、CSRの専門家だけに評価されるものではなく、より広い範囲の関係者・読者に理解してもらうことが重要であるとして、ドラフト段階のG4について、より技術的にまた複雑になっているのではないかという課題も出されています。

http://www.cokecce.com/news-and-events/news/opinion-the-end-of-the-sustainability-report-by-lucinda-hensman-head-of-sustainability-communications-at-coca-cola-enterprises

続きを読む

サステナビリティのプロフェッショナル

環境やCSR,サステナビリティに関する業務は増えていますが、実務に役立つ知識を短期間に身につけるプログラムが、アメリカのコロンビア大学でも始まるようです。

http://ce.columbia.edu/sustainability-management

このサステナビリティ・マネジメントに関する修士プログラムでは、大学内の各専門分野を横断的に学べる形のようで、最新動向を踏まえた興味深いコースがたくさんありました。残念ながら現在は、オンラインでの受講は提供されていないそうです。10数年前のペンシルバニア大学もそうでしたが、環境やサステナビリティは、分野横断型の実務が多いので、大学の様々な授業を組み合わせて受講できるプログラムはいいですね。

実務面でのサステナビリティの専門家のグループもLinkedInなどで多数できていますが、欧州ではサステナビリティの専門家のプラットフォームができています。今後も各所で広がりそうな気配です。

http://www.gacso.org/

 

グローバル化する調達先とCSR調達の課題

バングラデシュの首都ダッカ郊外でおきたビルの倒壊事故は、犠牲者が500人を超えると報道されており、インドのボパールでの事故に次ぐ惨事になる可能性があると伝えられています。ロンドンエコノミスト誌では、バングラデシュの建物基準遵守の手続きとともに、同国の基幹産業である繊維業の顧客であるグローバルなアパレル業界に対して、CSR(企業の社会的責任)の在り方を3つの選択肢を提示して問いただしています。

続きを読む

1 8 9 10 11