アメリカ:融資時の環境リスク評価:環境専門家にはプロフェッショナル保険が必要

サンフランシスコで行われたEnvironmental Bankers Associationの会議に米国の中小企業庁Small Business Administration (SBA)の環境リスク管理の責任者と地域の担当官が計3名参加して、2013年3月から施行されている融資時の環境リスク評価プロセスについて説明をしていました。(ご参考

発表内容の大部分は、公表されている文書に記載されているものですが、実際に話を聞くと見落としていた部分などが明確になり、あらためて勉強になります。

会場に参加している金融機関の環境リスク管理の担当者の反応が大きかったのは、SBAのガイドラインに基づき融資時の環境リスクの調査(いわゆるフェーズ1調査やフェーズ2調査)を実施する環境専門家(Environmental Professional, EP)に求められるプロフェッショナル保険についてです。 続きを読む

米国のクリーンエネルギー:シェールガスで若干Slow Down

最近発行されたいくつかのビジネス誌でも、米国のシェールガス革命によってオバマ政権が進めてきた再生可能エネルギーの推進への影響がでていることが考察されていましたが、オバマ政権の第一期でエネルギー省長官をつとめたSteven Chu氏も、同様のコメントをしています。

Chu元長官は、ノーベル物理学賞を受賞した研究者で、以前に在籍していたスタンフォード大学に戻ったところを、サンフランシスコの地元紙(クロニクル)がインタビューしていました。 続きを読む

協議会の設立ラッシュ:スマート・シティやM2M

スマートシティや建物データのクラウド管理などでは、業界横断型の取り組みが必要なことから、海外でも主要企業などが集まる協議会の設立が多くなっているようです。

先週 アメリカでIBM, GE, Microsoft、Bechtel、AT&Tなどが主要メンバーとなっているスマートシティを普及するための、smart cities councilが発足しています。メンバーには欧米の機器メーカー、ITベンダー、建設・エンジニアリングのほか、自治体など公的組織や米国グリーンビルディングの格付けであるLEEDを管轄するUS Green Building Council等、主要な非営利組織などもアドバイザーとして入っており、スマートシティの主要なプレイヤーや関係者がこうした多分野にわたっていることを垣間見ることができます。アメリカだけでなく、イギリスやフランスのほか、インドや韓国の組織や大学も参画しているようです。

また、イギリスではオラクルやドイツテレコムなどによる International M2M Councilが設立され、欧米を中心に活動を始めているようです。M2M市場は、2012年時点で約12兆円の市場が、2020年までに約10倍になることが予想されており(様々な市場予測があるようですが、年率20%くらいで成長するという見方は概ね共通しているようです)、特にエネルギー、交通、建物、農業などの分野で成長し、CO2をはじめとする環境負荷の低減に大きく役立つと考えられています。

国内でも建設会社から建物全体のデータのクラウド管理サービスが始まっているようですが、そのサービスの対象になる環境配慮不動産の普及を進めるため、社団法人環境不動産普及促進機構が今年初めに設立し、先日Webサイトがオープンしています。

同機構は環境不動産の普及に向けた調査などを進めるとしているように、建物を含むM2Mにおいてもパフォーマンスデータや、指標が不足していることが普及の課題になっているようなので、今後実務にも活用できるデータが蓄積・公開されることが期待されます。

シェールガス開発成功の背景(その2)

先日書いたその1の続きです。

シェールガス開発成功の背景としてもう一つ重要な役割を果たしてきたのが、1980年代から技術開発を続けてきた民間企業Mitchell Energy&Development (以下、Mitchell Energy)です。

Mitchell Energyは、シェールガスの父といわれるGeorge Mitchell氏によって設立され、テキサス州Barnett Shaleで最初に水圧破砕を実施しています。 続きを読む

GRI G4によるCSR情報の経営上の意味—重要(Material)情報の開示に向けて

GRIの新たなガイドラインG4では、ガバナンスやサプライチェーンなど、開示項目の拡充だけでなく、開示するCSR情報の重要性(Materiality)について重点が置かれており、CSR情報の経営上の位置づけについて、改めて留意する時期にはいってきたといえそうです。

G4では、各社が自社の事業にとって重要性の高い項目を選定して報告する形となっています。重要性が高い情報は開示し、重要性が高くない情報は開示する必要はないという仕組みになっています。このため、重要性を評価するための指針が、260ページ超のマニュアルの160ページにわたり項目別に記載されています。

ここで企業が自社にとってMaterial (重要な)項目を評価し、開示することに伴う、CSR情報の経営上の意味について考えてみたいと思います。

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CSR調達:バングラデシュ惨事後の安全対策の合意

バングラデシュのダッカ郊外の建物崩壊における犠牲者は1,100人を超え、建物の安全管理に関する課題を改めて考えさせられる惨事でしたが、欧米の衣料品ブランドをはじめとするグローバル企業によって検討されていた調達先への対策は、5月中旬に以下合意として発行され、現在では署名企業が40社を超えています。

合意された安全対策”Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh”では、署名企業の同国内の全サプライヤーを対象に、安全監査や対策の実施割合などを厳格に定めており、ILOやドイツ国際協力公社(GIZ)等と連携して同国の労働雇用省(Ministry of Labour and Employment of Bangladesh, MoLE)と共に、建物安全対策を推進していく内容となっています。

署名企業からも推察できるように、欧州系の企業が多くなっており、米国企業ではこの同意書には参画せず、別途自社内での取り組みを推進することなどが報道されています。

上記合意には具体的な数値割合なども含まれているため、経営や実務への影響も大きく、各社で異なる経営環境の中、短期間で合意するのは難しさもありそうです。

 

国際会計基準と環境債務の動向

国内での国際会計基準の強制適用は当面見送られ、任意適用の範囲を広げる方向という報道があり、金融庁からも任意適用に関する報道情報がだされました。

http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/soukai/20130528.html

数年前の国際会計基準との収斂では、資産除去債務に関する環境関連の費用をどのように認識・計上するか課題もありましたが、すでにルールが定着している米国内では、現在も国際会計基準との関連で、環境関連の費用認識や開示が今後どのように変わるかという議論が継続的にフォローされています。

結論からいうと、米国では当面(今後数年間は)、国際会計基準との関連で、米国内の環境債務の開示などに関する必要事項が変わる可能性は低いとみられているようです。

http://www.americanbar.org/content/dam/aba/publications/nr_newsletters/ed/201212_ed.authcheckdam.pdf

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Social Hotspots

日本で、ホットスポットというとセシウムなど放射性物質の値が局所的に高い場所という印象が強いですが、サプライチェーンのCSR評価、CSR調達等における、社会面(労働や人権など)地域や業種の評価をする世界の”Social Hotspots Portal”がオープンしました。

http://socialhotspot.org/

このポータルでは、CSRの評価をする際の社会的側面の評価をするグローバルデーターベースを展開しています。ポータル・サービスを提供しているのは、アメリカ東部メイン州にあるNPO:Social Hotspots Databaseで、製品のSocial Life Cycle 分析に関するガイドラインを、国連環境計画とともに公表しています。
アドバイザリー委員会には、主要なCSR関連組織であるBSRやAccountAbility, SustainAbilityなどのほか欧米の大学の研究者、大手企業、EPAも入っており、賛同者が多いことが伺えます。エコラベル等のデータベースを提供する国際貿易センタ(ITC)とも戦略パートナー関係を締結しており、グローバル展開する調達先の環境・社会面のリスク管理に向けたインフラが整ってきているようです。

CSR報告書のガイドラインであるGRIの最新版G4でも、サプライチェーンの状況報告が拡充されることになり、今後こうしたデータベースを活用する機会も増えてくるのではないかと思います。

これらの情報を社内でどのように活用し、リスク管理につなげるかが課題になりそうです。

アメリカのエネルギー情報

 

米エネルギー省がパートナー組織や企業と実施しているエネルギーデータイニシアティブの一環として、この5月に、以下のエネルギー情報のサイト”Free Energy Data (FRED)”がオープンしました。各州の1960年代からのエネルギー源や需給トレンド、エネルギーフローが一目で見えるようになっており、今後の予測値が2035年まではいっています。

とてもビジュアルにも工夫されているだけでなく、自分のデータを追加して分析することもできるようになっているようです。自治体や企業等がエネルギーに関する計画や意思決定などをするのに役立ててもらおうという試みのようで、アメリカのOpen Data Initiative の一環とのことです。 続きを読む

世界の廃炉

敦賀原発の今後の再稼働についての報道が続いていますが、世界各国では、原子炉の廃炉はどのような要因で行われているのでしょうか。

世界原子力協会のレポートによると、2013年時点で世界全体の原子炉の廃炉について、その要因別に分類すると、通常の経年や経済的な合理性に基づくものが101、事故によるものが11、そしてこのどちらにも該当しない政治的な決定によるものが25となるようです。このリストが以下のレポートにまとめられています。

http://www.world-nuclear.org/info/Nuclear-Fuel-Cycle/Nuclear-Wastes/Decommissioning-Nuclear-Facilities/#.UZlaC7VU-bM

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