環境省が取りまとめている土壌汚染対策法の施行状況によると、11月1日現在、国内の形質変更時要届出区域(土壌汚染があるが、現在すぐに対策が求められるのではなく、形質変更時に届け出ることが求められる土地)は、913サイト、要措置区域(土壌汚染対策が求められる土地)は113サイトとなり、合わせて1,000サイトを超える状況となっています。
2010年の土壌汚染対策法の法改正前にあたる2009年度末には、指定区域が約200サイトだったことを考えると、3年半で5倍に増加している状況となっています。すべてのサイトが有効利用されていないわけではないと思いますが、形質変更にあたる、解体や改築などをしない、いわゆる未利用の建物や有効利用が進められていない土地もそれなりの割合になっている可能性があります。
土壌汚染対策が進まずにいることを反映しているためか、社団法人土壌環境センターが発表した昨年度の土壌汚染ビジネス市場は、2006年度のピーク時の半分以下の800億円に落ち込んでいる状況です。(今年度は不動産市況も活発になり、増加に転じると思われますが・・)
こうした中、欧州では土壌汚染対策に関する規制や、汚染土地の健康被害と今後の対応に関するいくつかの進捗が見られます。
まず、イギリスでは、2012年に土壌汚染対策の法制度を大きく変更しました。汚染土地の定義を見直すとともに、土壌汚染調査を重視して、浄化対策については、土地価格に対する浄化費用割合、土地所有者の経済的負担、さらに中小企業の経営状態等を踏まえ、地方自治体で浄化義務を課すかどうかを検討することが明示されました。
一方、欧州全体では、土壌汚染の法制度化が進められていない国もあり、現在25万サイトといわれている汚染土地は2025年までに5割増加することが見込まれています。
現在、新興国を中心に、土壌・地下水汚染の深刻な健康被害が報告されていますが、すでに開発や都市化が進んだ欧州とは状況が異なっているとして、欧州内における土壌汚染の健康被害に関する研究も進められるようになっています。これまであまり明言されていなかった第一次大戦時の影響なども事例として記載されたレポートがこの秋公表されました。
国内でも、産業構造の変化に伴い、土地利用のニーズは時代とともに移り変わります。その中で、産業跡地は、各種ユーティリティ(電気、ガス、上下水道等)や道路などのインフラが整っており、新規の土地を開発するよりもコストもかからず、環境負荷も少なく、立地もよい土地も多いと思われます。国内人口が減少傾向に向かう中で、うまく産業跡地を利用して都市を進化させていくことが重要になるでしょう。
産業跡地をうまく活用でき、環境保全と経済性を維持できる環境政策が、土壌汚染の分野でも徐々に必要になってくるのではないでしょうか。
産業跡地の再利用(ブラウンフィールド再開発)に対する公的支援は、アメリカでも大きな経済効果がでており、イギリスでも今般の制度変更による経済メリットは今後10年で2000-4000億円近くなると試算されています。
日本でもこうした施策がうまくできれば、オリンピック後の持続的な経済成長にもつながりそうです。
PS 昨日ASTM E1527-13が正式に発行されました。また本ブログ等でもご紹介する予定です。