サンフランシスコで行われたEnvironmental Bankers Associationの会議に米国の中小企業庁Small Business Administration (SBA)の環境リスク管理の責任者と地域の担当官が計3名参加して、2013年3月から施行されている融資時の環境リスク評価プロセスについて説明をしていました。(ご参考)
発表内容の大部分は、公表されている文書に記載されているものですが、実際に話を聞くと見落としていた部分などが明確になり、あらためて勉強になります。
会場に参加している金融機関の環境リスク管理の担当者の反応が大きかったのは、SBAのガイドラインに基づき融資時の環境リスクの調査(いわゆるフェーズ1調査やフェーズ2調査)を実施する環境専門家(Environmental Professional, EP)に求められるプロフェッショナル保険についてです。
SBAでは調査を実施するEPは、案件1件あたり1億円(100万ドル)の補償が可能なプロフェッショナル保険を持っていなければならないということで、マニュアルにも記載されています。
たとえば3名のEPがいる環境コンサルティング会社では、300万ドル(約3億円)分の補償を受けることが可能なError & Omission保険に入っている必要があります。EPにはもちろん資格や実務経験などの要件もありますが、それらに加えて、保険加入が求められています。
*プロフェッショナル保険については、以前のブログで一部紹介しています。
日本では土壌汚染調査などを実施している企業のうち、プロフェッショナル保険を購入している企業は、数年前時点で数社しかいないといわれており、まだ浸透していない分野であるため、上記の要件や保険の補償額の規模も現実的ではないように思われます。
一方、海外では、特に公的組織からの受注などの際には、プロフェッショナル保険や請負業者保険にはいっていることが受注の要件になっているところが多くなっています。また、立場は違いますが、上記ブログで紹介したような、重工業関連の企業や建設プロジェクトなどに環境汚染の第三者賠償保険などを義務付ける動きもでてきており、環境関連の業務のリスク管理ツールとして少しずつ広がりを見せているといえそうです。海外での業務やプロジェクトが増えてくる中では、発注側としても受注側としても、また投融資においても、リスク管理の選択肢として検討する機会も増えてくるでしょう。