ESG情報開示ルールの収斂に向けた動き

ESG投資の拡大と共に、企業のESG情報の重要性が高まる中、サステナビリティやESGに関する情報開示ルールの設立機関の連携が続いている。直近の動きを紹介したい。

7月にGRIとSASBの連携の発表があったことは本稿でも紹介したが、9月上旬には、これらの2団体に加え、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、CDSB (Climate Disclosure Standard Board)、IIRC (国際統合報告評議会)の5団体が共同で情報開示ルールの取り組みを進めることを公表した。過去20年間、様々な環境変化のなかで、企業のサステナビリティに関する情報開示は、ビジネス経営において基盤的な要素の一つになっており、その認識を共有する5団体が協調して取り組むことで、より包括的な情報開示の枠組みを作成できるとしている。

その後9月下旬、ダボス会議を主催する世界経済フォーラム (WEF)のInternational Business Council(IBC)が、4大監査法人(デロイト、EY、KPMG、PwC)と共に作成したESGの主要指標等を公表した。この指標は、主要な21指標と、拡大34指標から構成され、SDGsの分類にも沿う4分類;Principles of Governance(ガバナンス原則)、Planet(地球)、 People(人)、Prosperity(繁栄)に分けられている。

ESG情報を開示する多くの大手企業は、複数の開示基準やガイドライン等に苦慮しており、国際会計基準のような一貫した比較可能な共通指標により透明性の高い開示を進めることが、ESGの取り組みやサステナビリティを進めることになると考えているようだ。主要21指標はすでに多くの企業が公表している情報だが、原則として定量情報となっている。

さらに9月末には、国際会計基準を策定するIFRS財団が、サステナビリティ報告の基準等を設立することを目的に、持続可能性基準委員会(Sustainable Standard Board, SSB)の設立を検討していることを公表した。サステナビリティ報告の重要性は多くの関係者の間で高まっており、一貫性のある比較可能な報告にしていくことが急務だとしている。このため、新たにSSBを設立するか、既存の組織とどのように協力すべきか、外部認証を求めるかなど等、11の質問を12月末までパブコメすることとしている。パブコメの質問には、SSBが設立した場合、開示内容を気候変動中心として始めるか、その他の環境問題やより広いESGについてどのように扱うか、具体的な進め方にも踏み込んだ質問が含まれているが、現在、投資家や関係者が最も懸念している課題は気候変動であるとの認識も示されている。

これらはいずれも、ESG情報の開示に関わる影響力の強い団体や組織による、これまでにない大きな動きである。今後数年、ESGの情報開示ルールの収斂が本格的に始まっていきそうだ。

*本稿は、環境新聞2020年10月21日号に掲載されました。