緊急時の重要基盤セクターとしての環境ビジネス業界

わが国でも新型コロナウィルスの拡大抑制に向けて緊急事態宣言が出され、東京や大阪などでは、かつてない静寂を経験している。

世界各国で新型コロナウィルス(COVID-19)が甚大な影響を及ぼしている中、日本国内では生活に必要なインフラは維持され、電気・ガス、水や道路、食品があり、治安も維持されている。現状と共に、平時の豊かさも改めて感謝する機会にもなる。

現在、感染者が最も多い米国でも外出制限等が課されている地域があるが、アメリカの国土安全保障省は、このような緊急事態にも必要不可欠な16業種を公表している。これらの業種は、Critical Infrastructure Sectors(重要なインフラセクター)と呼ばれ、エネルギーや金融、医療、緊急サービスのほか、食品・農業、水・排水などが示され、管轄する省庁が明示されている。

今回、COVID-19の緊急事態において、州や自治体、民間企業において事業継続の判断する際の指針として、この重要インフラセクターの情報は3月下旬に更新された。一般市民の公衆衛生と安全を確保して、国民が日常生活を継続するためには、これらの重要業種とそこで働く人々の安全な事業継続が不可欠であるとしている。

米国の環境ビジネス業界の関係者からは、COVID-19によって、これまでEHS(Environment, Health and Safety)と呼ばれていた分野が、HSE (Health, Safety and Environment)になっているというコメントがあったが、今後、健康や安全を重視する流れが出てくるものと思われる。

一方、社会の必要不可欠な基盤ビジネスである環境ビジネスの企業や専門家は、大気、水、廃棄物、浄化、モニタリングなどの技術やノウハウをどのように活用し、社会の安全や環境維持・保全に貢献するかという動きも始まっている。

アメリカ・カンザス州に本社をもち、グローバルに展開する環境エンジニアリング企業Black&Veatch社では、COVID-19に対応するための外部から革新的な技術の募集を始めた。

また、アメリカ国立科学財団の支援のもと、ミシガン大学とスタンフォード大学の研究者は、下水の分析により、廃水から検知するウィルスを分析して、地域の感染予防につなげることや、ウィルスの拡散を温度湿度などから分析する可能性を目指しているという。新型コロナウィルスの排水モニタリングは、欧州でも実施されている。

在宅勤務が進む中、ITや遠隔モニタリング、AIなどの技術の活用や応用も進むことが予想される。環境ビジネスの分野でも技術革新の流れは進んでおり、Environmental Business Journalの最新号では、2020年代に環境ビジネス分野で、革新的な技術の普及時期やビジネスに与える影響を詳細に分析している。

米国企業では、ITやデータの地図情報との連動、ビジュアル化などは早くから進めているが、サービスの質や、生産性向上、費用効率化や従業員のリテンション(維持)に有用な影響があると捉えている。

多くの犠牲を伴うこのパンデミックに取り組むことにより、ポストコロナ時代に、安全、健康と環境を配慮する社会づくりに向けたコンセンサスと調和が高まることを願いたい。

本稿は2020年4月15日付の環境新聞に掲載されました。