7月の米国の環境ビジネス会議は、西海岸のワシントン州シアトル市で開催された。
シアトル市は、ボーイング社の工場のほか、マイクロソフト、アマゾン、スターバックスなどの本社があり、全米でもクリーンで安全な都市として知られている。市内では昨年7月からプラスチック製のストロー等が禁止され、スターバックのアイスコーヒーはストローが不要なカップになっており、他店のドリンクに使用されていたストローは植物由来で、“100% Compostable ”と記載されていた。
米国では州によって環境規制は大きく異なるが、州や市レベルで規制が先行することが多く、西海岸はカリフォルニア州をはじめ、環境保護のために先行した規制がある。
今回は、環境ビジネスにおけるAIの活用が紹介された。
大手コンサルティング会社の試算によると、米国をはじめとする先進国が、適切にAIを活用することができれば、2035年までに38%生産性を高めることが可能であるという。特に、教育や建設などの分野では70%以上の生産性向上が可能といわれており、まだ投資がそれほど多く行われていない環境分野では今後の成長余地は大きいようだ。
今回AIを活用したサービスとして紹介されたものの一つは、大手企業の環境や労働安全衛生の許認可書面の作成に活用するものだ。米国でも大手企業は、地域や拠点に応じ、数千以上の届出や許認可書面を作成、管理しており、膨大な数のコンプライアンス書面がある。これらの書面には、共通の記載事項や説明などが必要場合も多いが、拠点毎、担当者毎、また委託した環境コンサルタントなどによってその記載内容やその細かな表現等が異なってしまうことがある。
同じクライアント企業からの多拠点にわたる書類を依頼されると、過年度の書類の記載内容を確認し、作成するため、提出するまで数週間を要する。こうした書面をAIを活用して数時間で作成する仕組みが開発され。すでに10社以上のコンサルティング会社等から問い合わせがあり、トライアルを実施しているという。誤記やミス、異なった表現等がなくなり、大幅にコストと時間の削減が可能であるとして、高い潜在ニーズがあるようだ。
米国では、もともとITの活用が進んでいるが、いわゆる、ITによる自動化(Automation)に、人工知能(Artificial Intelligence)を活用した技術の実用化も進められ、企業も最新技術の導入に積極的だ。
AIだけでなく、ブロックチェーンや3Dプリンター、ドローンなどの技術は、実務を大きく変える主要技術であるが、各社が自社内で開発するには限界がある。このため、環境関連企業でも、最新技術を保有する会社を買収するケースが増えているという。
持続可能な循環型社会に向けて、環境保全の分野でも最新技術をより効果的に活用していくことは、自然環境の保全に役立つだけでなく、次世代にとって魅力ある環境ビジネス業界を維持・拡大していくためにも有用であるといえそうだ。
*上記詳細のほか、アメリカ環境ビジネス業界のトレンド、話題のトピック、規制動向などの内容が含まれる約25ページの米国環境ビジネス会議報告(無償)を入手されたい方は、info@finev.co.jp までご連絡ください。PDFファイルをご送付させて頂きます。
今後のアメリカ環境ビジネスの成長分野(2019年)
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(出所)(西海岸北西部)環境ビジネスサミット(2019年7月)資料より
本稿は環境新聞(2019年8月28日)に掲載されました。