7月6日、欧州委員会はタクソノミー規制の8条に該当する委任法を正式に採択し、企業や金融機関等が、欧州の定めるタクソノミー(いわゆる定義)に沿い、気候変動や環境に対応した事業や投資の割合を開示する枠組みを規定した。
この規制は、今春に採択された新企業サステナビリティ報告指令によって、気候変動や環境等の情報開示が義務付けられる約5万社に対して、その開示内容等を規定するものである。具体的には、2023年事業年分から、タクソノミーに基づき、気候変動や環境保全に外とする事業がどの程度の割合か、金融機関等に対しては、投資や融資の割合を開示するように求めるものである。
欧州では、企業や金融機関に気候変動や環境保全に積極的に取り組むことを政策や規制全体で戦略的に進めており、欧州の枠組みを世界的に展開することを目指している。
アメリカでも、7月下旬、証券取引委員会(SEC)議長が、気候変動等に関する開示義務を課す規制案を今年末までにまとめていることを言及した。現在、アメリカでは気候変動や環境リスク等について、一定の条件に基づく有価証券報告書への開示義務はあるものの、気候変動全般についての情報開示はまだ任意であり、サステナビリティ報告書等に記載されているほうが多い。SEC議長は、気候関連やESG 情報の一貫性や比較可能性が重要であり、投資家もそうした情報を求めているとも発言している。
国内では、すでによく知られているように気候変動情報については、6月に公表されたコーポレートガバナンス・コードに基づき、来年のプライム市場上場企業に対して開示拡充が求められている。最近では金融庁がより強い義務化に向けて検討しているとの報道もある。
欧州や米国の法制化や政策の動きは予想以上にスピーディに進んでおり、国内でも日本銀行や金融庁による金融面での政策が進められている。今秋開催される気候変動条約国会議(COP26)に向けて、国際会計基準を策定するIFRS財団が、気候変動情報の開示ルールの策定を始める方向となっていることから、ルールづくりについて各地で動きがでているともいえるだろう。
気候変動やESG情報については、この数年で乱立する基準やガイドラインが一つの方向に収束するかどうか、まだ見えにくい状況ではあるものの、何らかの形で気候変動の情報の開示が義務化されることがより現実的になりつつある。さらに欧州が進めるように、その情報をもとに投資家があたりまえのように評価する時代が意外に早く来る可能性があるだろう。
*本稿は、環境新聞(2021年8月18日号)に掲載されました。