2022年4月から東京証券取引所において新市場区分が適用される状況を踏まえ、金融庁はコーポレートガバナンス・コードの改定案を公表した。
今回の改訂では、サステナビリティに関する取り組みや開示をより進める方向性が示されている。
特に、気候変動に関しては、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に沿った開示を進めることを求める表現が追記されており、具体的に以下の記載がある。「プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。」
また、「取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定すべきである。」としており、企業におけるサステナビリティやESG/SDGsに関する取り組みを経営層がより深く関与することを求めている。
こうした動きの背景には、国際会計基準を策定するIFRS財団が、気候変動を中心とした情報開示のルール策定に向け、動き出していることがある。
米国でも証券取引委員会(SEC)の委員からも気候変動等に関する情報開示拡充を求める意見等が出されている。
米国では、カリフォルニア州で、今年1月、同州で事業を行うすべての米国企業等のうち、売上高が10億ドル(約1100億円)以上の企業に対して、サプライチェーンにわたるCO2排出量の開示を義務付ける法案が提出された。開示範囲は、スコープ1と2だけでなく、サプライチェーンを含めたスコープ3まで求めており、第三者認証が義務付けられるほか、対象企業に対してサイエンスベースの削減目標(SBT)の開示も求める内容となっている。
提出されたデータは、同州がつくるデジタル・プラットフォームで集計され、カリフォルニア州の住民がアクセスできるようにするとしている。この法案が成立するかはまだ不透明であるが、対象となる企業は約5,000社と言われ、法案が通った場合には2024年から段階的に開示が求められることから大きな影響があると指摘されている。
同州では今年2月に金融機関等に対して気候変動情報の開示を義務付ける法案も提出されており、ともに動向が注視されている。これまで自主開示が進められてきた気候変動やESGに関する情報開示は、大手企業等を中心に、徐々に開示が義務付けられる動きが出てきている。
本稿は環境新聞(2021年4月28日号)に掲載されました。