気候変動、サーキュラー・エコノミーと生物多様性

イギリス・グラスゴーで開催される気候変動条約国締結会議(COP26)を前に、CO2以外の温室効果ガス削減に向けた動きがでている。

9月17日、アメリカのバイデン大統領とEUのウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が掲げたグローバル・メタン・プレッジ(Global Methene Pledge, GMP)は、温室効果の高いメタンについて、世界全体で削減することを呼びかけた。日本を含めた20か国以上が賛同しており、賛同する国々で、世界全体のメタン排出量の30%をカバーし、GDP比では6割を占める国が賛同する枠組みとなっている。

またアメリカ環境保護庁は、2020年に制定されたアメリカイノベーション・製造業法に基づき、エアコンや冷蔵庫、冷凍庫などに使用されている代替フロンHFCs(ハイドロフルオロカーボン)を2036年までに85%削減するための規制内容を公表した。

同法で規定された18種類のHFCsに関して、製造・輸入事業者等に過去の排出分から排出枠を割り当て、削減できない場合には、他社の削減分からオフセットする排出枠取引も取り入れるほか、排出枠の動きを管理する電子トラッキングシステムも導入する。また、コンプライアンスのための記録管理に関する第三者監査を求めると共に、消費者等にHFCの製造・消費データを公開する予定としている。

排出削減は、2036年まで5段階に分けて削減する予定を立てており、2023年までの期間に10%減、2028年までに40%削減する予定となっている。違法な取引等を予防するため関係省庁や税関などとも連携する方針が示されている。

代替フロンは、オゾン層を破壊するフロンの代替物質として冷蔵庫やエアコンなどの冷媒等として多用されており、関係する製造業や輸入事業者は、確認作業等の必要手続きが増すことが予想される。

気候変動だけでなく、サーキュラー・エコノミーに関する規制も続いている。

カリフォルニア州では、リサイクルマークの厳格運用に関する法律も制定された。カリフォルニア州の規定するリサイクルの基準を満たさない限り、パッケージなどにリサイクルマークを提示できないようになり、2024年1月から施行される予定となっている。また、同時期に子供用製品(車のチャイルドシートやベビーベッド等)にPFAS(ペルフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル化合物)の使用を禁止する法律も制定された。カリフォルニア州では、カーペットや化粧品等の含有物質としてPFASの規制を策定しているが、さらにPFASが含まれる使い捨ての食品包装材などを禁止すると共に、使用している場合にラベル表示を義務付ける法律も制定されている。

サーキュラー・エコノミーを推進するため、リサイクルを行う際に、有害物質の使用状況の情報共有を促す動きは、欧州でも進められている。廃棄やリサイクル事業者が有害化学物質の取り扱いや管理を円滑に進めるため欧州化学庁は、9月に製品の含有物質情報に関するデータベースを公表した。

こうした気候変動、サーキュラー・エコノミーの動きに加え、COP26の前に中国で開催中の生物多様性条約締約国会議(COP15)では2030年に向けた生物多様性の目標が設定される予定となっている。気候変動と同様に財務影響の報告も推奨されており、引き続き、環境関連ではこの3つのテーマで様々な制度化が進む方向となりそうだ。

*本稿は環境新聞(2021年10月20日発行)に掲載されました。