欧州・米国のPFAS動向アップデート

わが国では、2月中旬の厚生労働省の委員会で、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)の水道水の暫定目標値案を 50ng/Lとすることが公表された。

有機フッ素化合物PFASの問題は、日本国内では、主に飲用水の規制に関する動向となっているが、欧州や米国では、大気、廃棄物、地下水、下水汚泥など、より広範な影響を評価し、規制や政策を検討する方向性が示されている。

この数か月の欧州及び米国の動きを紹介したい。

2019年12月、欧州環境庁は、PFASに関する短いレポートを公表した。4,700種類以上に及ぶPFASについては、詳細な環境影響や健康リスク評価をすべての化学物質で実施することは難しい。このため、予防的なリスク管理を進める方向を模索するとしている。

飲用水については、欧州飲用水指令に基づき、PFAS全体のグループ基準値(0.5μg/l)と個別の16種類のPFASについて基準値(0.1μg/l)の策定を提案している。製品含有については REACH規則のもと、PFOAも今年7月から規制対象となる。

飲用水や製品含有だけでなく、デンマーク、ドイツ、オランダ、スウェーデンなどでPFASによる表層水の汚染も確認されており、土壌等の規制値も設定したほか、食品との接触のある素材に使用禁止することなどを規定した国もある。

米国では先月(2020年2月)に米国環境保護庁(U.S. EPA)が、2019年2月に公表したPFASアクションプランのアップデートを公表した。

2019年12月に飲用水のPFAS分析方法を新たに認定したほか、地下水汚染浄化のガイドラインを発行し、詳細調査のスクリーニング基準などを示している。

今後、有害物質登録簿(Toxic Release Inventory, TRI)と有害物質管理法(TSCA)に基づく安全管理を進めるほか、来年にかけて安全飲用水法、スーパーファンド法、資源保護回復法などでの対応を進める。毒性や分析方法の研究開発のほか、廃棄物や農業への環境リスクの影響評価にも予算を投じている。

PFAS対応に取り組む米国企業では、消火剤などから発生したPFAS汚染水の浄化や国防省のPFAS汚染地の浄化などを進めており、実績もでているようだ。また、小売業でも包装材や布製品等におけるPFAS使用製品の取扱禁止等を進めている。日本で販売されている欧州メーカーの調理器具にも、“PFOA/PFOSは不使用”との表現が記載されているものもあり、海外の消費者等には一定の関心があることが推察される。

U.S.EPAは、上記アップデート資料の中で昨年度にEU、フィンランド、オランダ、デンマーク、ドイツ、オーストラリアなどと共に日本とも対話をしていることが記載されている。

PFASについては、諸外国で、飲用水だけでなく、大気、水、土壌、それらのさまざまな分野での規制化が進められる方向性がみられる。国内での検討が進む際には、可能な分野や範囲において、国際的に調和的な環境政策の立案が進められることにより、優れた技術の相互提供や普及が進むことが期待される。

本稿は2020年3月18日環境新聞に掲載されました。