国内では2019年4月から施行される予定の改正土壌汚染対策法(2017年5月制定)の政省令の発行が間近になっているが、世界各地でも土壌汚染・産業跡地関連法の動きがでている。
アジア・太平洋地域では、まず中国で今年から土壌汚染に関する包括的な国の法律が施行される。中国では、2014年ごろから土壌汚染調査や対策に関する通知などが発行され、産業跡地の再開発の際には、土壌汚染調査を実施し、浄化を行わない限り、再開発や土地利用権の移転等を制限する方針が講じられてきた。同時に、調査手法や浄化手続きなどのガイドラインも発行され、土地利用用途別に詳細調査等が必要となるスクリーニング値も公表された。
また、北京市などでは条例も制定されていたが、国全体としての法律は発行されておらず、2018年8月末に初めて包括的な国の環境法として土壌汚染防治法が制定された。本法は、これまでの通知やガイドラインの考え方を踏襲しながら、汚染責任者についても明示すると共に、土壌汚染の調査や浄化の基準値として、土地利用を二分類し、オランダと類似のスクリーニング値、介入値という考え方を導入している。今後、中国国内の工場移転等の際には、土壌汚染調査や浄化対策などのリスク管理がより明確に求められるようになる。
また、韓国では2018年6月から、土壌汚染リスク管理の対象となる施設等に対して、環境汚染賠償責任保険の加入を義務付けている。
オーストラリアでは2018年10月から南オーストラリア州でリスクベースの浄化基準の考え方が導入された。
アメリカでは2018年3月に、他の法律と共にブラウンフィールド法改正(通称BUILD法)が制定された。米国では幅広い潜在的な汚染原因者に対して、連帯責任・遡及責任・無過失責任という厳格な責任を課し、過去に遡って責任追及がなされることを原則としているため、その免責のため様々な要件やルールが追加されてきた。今回の法改正は、その免責範囲としてまだ明示されていなかった不動産の借り手(テナント)に対して、一定の要件のもと、免責を明示したほか、補助金の使途を広げ、より柔軟な活用が可能になった。さらに、予算審議中の米国のインフラ政策においても、汚染懸念のある産業跡地(ブラウンフィールド)が対象となり、ウォーターフロントなどにおけるクリーン・エネルギーの普及推進策が組み込まれている。
米国では2018年7月に辞任したプルイット環境保護庁長官の後任に、アンドリュー・ウィラー長官が着任しているが、ウィラー長官は1990年代から環境保護庁で、有害化学物質の汚染防止対策等を担当しており、汚染地(スーパーファンド・サイト)の浄化対策に重きを置いているとの報道もなされてきた。引き続き産業跡地の浄化対策が推進されることが予想される。
米国ブラウンフィールド法改正(BUILD法)(2018年3月)の主な内容
- 地方自治体が所有する場合の浄化責任の免責
- 不動産をリースしているテナントへの浄化責任の免責
- 浄化補助金の拡充(2023年まで、毎年2億ドルの予算確保)
- 浄化補助金の使途の柔軟化
- ウォータフロントのブラウンフィールドにおけるクリーンエネルギー開発へのインセンティブ拡充
*本稿は、2019年1月23日環境新聞に掲載されました。