再生可能エネルギーでつくるグリーン水素

新型コロナウィルスによる経済活動の低迷は、再生エネルギー業界にも影響を及ぼしているが、各国ではクリーンエネルギーに向けた政策支援が拡充され、州や自治体レベルでも次世代のエネルギープロジェクトが進められている。

アメリカ・カリフォルニア州のSGH2 Global社は、同州ランカスター市で世界最大規模のグリーン水素プロジェクトを開始した。同社とNASAの科学者が開発した技術はプラズマ強化ガス化技術によって、紙、布製品、プラスチック等の廃棄物からエネルギーをつくるWaste-to-Energyだ。ランカスター市が供給する年間約4万トンのリサイクル廃棄物から、3800トンの水素を製造するという。このプロジェクトは、再生可能エネルギーから水素をつくるいわゆる“グリーン水素”よりCO2排出は少なく、価格も天然ガスを使用して製造する水素と同程度に安価になり、市はごみ処理費用の低減にもつながり、今後のゲームチェインジャーになる可能性があるとしている。

同じくカリフォルニア州サンタバーバラにあるHyperSolar社は、太陽光と水(海水、排水などあらゆる水)でつくる水素太陽光発電パネル(Gen1水素パネル)の製造を開始した。再生可能型水素の開発を行う同社では、既存の送電網に頼らない水素発電を目指しており、既存の電解技術を使って価格競争力のある水素太陽光発電を開発している。

また、西部のユタ州、ネバダ州、カリフォルニア州の自治体に電力供給するため1970年代に設立されたIntermountain Power Agencyは、1980年代から稼働する現在の石炭火力発電をリタイヤさせ、天然ガスによる発電所に2025年に更新する。2つの燃焼タービンをもつ設備は、再生可能エネルギーによって製造された“グリーン水素”を当初30%投入し、最終的には2045年に100%水素による発電に切り替えると発表している。

カリフォルニア州は、2045年までにすべての産業セクターでカーボン・ニュートラルになる目標を掲げており、これらのプロジェクトは州の低炭素化に貢献するとして期待されている。

欧州では7月8日に今後のクリーンエネルギー政策として、欧州水素戦略が発表された。太陽光や風力エネルギーを利用したグリーン水素を2024年までに100万トン製造することをめざしている。欧州ではドイツやフランスでも国内の水素関連事業への支援政策を進めているほか、オーストラリアや南米チリでもグリーン水素の産業育成を支援している。

日本国内でも、石炭火力発電所の廃止に向けた政策方針が発表され、大手企業の再生可能エネルギー事業や蓄電事業への参入が広がっている。

コロナ禍を経て、世界各地でこれまで以上に再生可能エネルギーをはじめとする次世代エネルギーへのシフトが進みそうだ。

本稿は2020年7月15日号の環境新聞に掲載されました。