欧州やアジアでもプラスチック製ストローやレジ袋の規制が広がりつつある。
欧州では、2018年1月にプラスチック戦略を公表し、2030年までにすべてのプラスチック製品をリサイクル可能にする方針を打ち出した。
2018年5月には、ストローや綿棒、プラスチック製の食品容器など、プラスチック製品10品目について規制する指令(Directive)案が提案され、10月24日に欧州議会で可決された。指令が発行されると、EU加盟各国は2年以内に国内での法制化が求められることになり、項目別に実施期限等が規定される方向となっている。
欧州の海岸で確認される海洋漂流ごみのうち、約80-85%がプラスチック製品であり、その約半数が「使い捨て」いわゆる“シングル・ユース”プラスチック製品であるという。この中で、今回の規制10品目が約86%を占めている。今後、具体的に規制が行われるのは、まずプラスチック製ストロー、容器、綿棒等の3品目になり、これらは2021年までに使用禁止になる方向である。このほか、製品デザインやラベルの義務化なども予定されている。
すでに、国別の規制化等の動きもある。英国では、プラスチック製の綿棒、ストロー、かきまぜ棒(ステア)について、2018年10月に経済的な影響評価も公表され、これらの使用を禁止する法案が検討されている。規制による年間影響費用は約430万ポンド(約6.5億円)と試算されているが、法制化の方向が示されている。イギリスで2018年1月に公表された今後25年間の環境改善計画“A Green Future: Our 25 year plan to improve the Environment”においても、また2018年3月に公表された海洋戦略“Future of the Sea”においても、プラスチック廃棄物による海洋環境への影響改善が含まれており、今回の使い捨てストロー等の禁止はこれらの方針に沿うものとなっている。
フィンランドでは、10月に世界で初めてプラスチック・ロードマップを策定した。セクター間の協力を促し、不要なプラスチック利用の削減や効率利用、リサイクルや代替技術の開発などについて全方位的な方針を示している。
欧州だけでなく、アジア各国でも使用制限や課金の強化がある。
台湾では、2025年までに使い捨てプラスチックストローを全廃する目標を出し、来年(2019年)7月1日から、公共施設、デパート、学校などで使用を禁止する。
インドでは、2016年に廃棄物関連法の全般的な改正時に、プラスチック廃棄物に関する規則も改正された。原則として厚さ50マイクロン未満のプラスチック袋などが禁止され、ブランドオーナーや小売業者も対象とした規制が制定されている。各州ではこれらを受けて2年以内に実装することとなり、制度化が進んでいる。ニューデリー市で2022年までに使い捨てプラスチックバッグを全廃する方針を立てているほか、ムンバイ市のあるマハラシュトラ州でも同様の規制が出されている。しかしながら、すでに生活全般に広く普及しているプラスチック製品の規制は難しく、マハラシュトラ州では、今年4月に発行した規則のうち、規制対象と対象外の製品を表示したガイドラインをこの10月に発行し、認知を広めている。ベトナムでは、2019年1月からプラスチックバッグに対する課金が増額される。
プラスチックの利用が増加した背景には、利便性の高い生活スタイルや生活水準の向上など様々な社会経済的な背景がある。一方、廃棄物が適正処理されていないことなどによる海洋汚染、廃棄物問題、自然環境の悪化は長年かけて顕在化してくるだろう。海洋汚染防止に向けた技術や制度などの国際協力とともに、諸外国の法制度化を踏まえて、日本国内でどのような制度や仕組みを構築するか、長期的な方針も重要になるだろう。
(参考)イギリスの25年環境戦略 *プラスチック廃棄物に関する部分
目標
- 2042年末までに不要なプラスチック廃棄物をゼロにする。
- 海洋プラスチック廃棄物、とりわけ陸上から海洋にいくものを大幅に削減する。
- 生産段階で、生産者に対して環境影響への責任を持つことを促し、多様なプラスチックの使用を合理化する。
- 消費段階で、使い捨てプラスチックの量を削減し、循環するプラスチック量を削減する。
- 使用終了段階で、リサイクルをしやすい仕組みをつくる。
- 廃棄/廃棄物管理段階で、リサイクル率を高める。
- 新たに官民NGOを含む業界調和の枠組みをつくる。
- 国際的なリーダーシップをとる。
- 自治体の執行強化のため、新たな規制を導入し、ガイドライン等を作成する。
- 官民資金によるごみ削減のキャンペーンを実施する。
- ゴミ革新基金をつくって、研究開発を推進する。
(出所)U.K. “A Green Future: Our 25 Year Plan to Improve the Environment” (2018)より作成
*本稿は、2018年12月19日環境新聞に掲載されました。