大手コーヒーチェーンのスターバックスが世界中の店舗で2年以内にプラスチック製のストロー廃止の発表をすると、国内でもにわかにレジ袋やストローなどのプラスチック製品の規制化の動きが本格化しはじめた。すかいらーくやマクドナルドなどがストローの廃止を発表。その後、東京都でも生物分解など新素材のストローの募集を開始した。
環境省では8月から中央環境審議会の循環型社会部会にプラスチック資源循環戦略小委員会が設置され、ストローだけでなく、レジ袋をはじめとする使い捨てプラスチック製品全般について資源循環戦略を策定することとしている。来年6月に日本で開催されるG20に向け方向性が出される予定だ。
ストローから始まったプラスチック製品規制の背景には、米国、英国、EUをはじめとする諸外国の法制化の動きもあるようだ。
その一つは、米国で2018年10月に制定された“Save Our Seas Act(我々の海を守る法)”がある。この法律は、海洋漂流ごみに関する法律が改正されたもので、10月11日にトランプ大統領が署名・成立した。
毎年800万トンに上るとされる米国の海洋漂流物の清掃や撤去などの費用を予算化するとともに、これらの漂流ごみを排出する国々への対応強化を求め、国際的な連携を進めるものである。米国の海洋漂流物の影響は特に西海岸で出ていることもあり、トランプ大統領は、10月の法制化発表の際に、排出元について中国そして日本も挙げている。
大手化学メーカーのデュポンやダウ、BASFなどが所属するアメリカ化学工業協会(ACC)も法制化を支援してきた。同協会のプラスチック部会では、本年5月に、2030年までにプラスチック梱包剤を100%リサイクル可能にし、2040年までに100%再利用・回収できるようにするという業界目標を公表しており、民間レベルでも循環型経済に向けた取組も進んでいる。
自治体の動きも活発だ。スターバックスの本社が所在する米国西部オレゴン州シアトル市では、2018年7月から全米主要都市として初めてプラスチックの使い捨てストローを禁止した。カリフォルニア州でも使い捨てストローは、2019年から廃止され、違反すると一日あたり25ドル(約2,800円)の罰金が科されることになる。
カリフォルニア州は、米国内でも独自・厳格な環境規制が制定されることが多いが、小売店におけるプラスチック製のレジ袋も2014年から禁止され、実質的に禁止されているハワイ州とともに紙袋にもリサイクル費用が課される。こうした動きは主要都市から広がっており、サンフランシスコ市では、2007年からプラスチックのレジ袋が禁止され、シアトル、ロサンゼルス、シカゴ、ボストンのほか、テキサス州オースティン市にも広がっている。ニューヨーク市やワシントンD.C.ではレジ袋への課金があるほか、現在70を超える州法案も提出されている。
米国のプラスチックレジ袋・ストロー等の禁止の近年の主な動き
- 1991年 コネティカット州 小売店にプラスチックレジ袋のリサイクル努力義務
- 2007年 サンフランシスコ市 プラスチックレジ袋原則禁止
- 2009年 ワシントンDCで レジ袋への課金(プラスチック・紙ともに)
- 2011~2015年 ハワイ州内の郡で段階的に禁止
- 2014年 カリフォルニア州 プラスチックレジ袋原則禁止
- 2018年 シアトル市 プラスチック製のストロー・カラトリーの禁止
- 2019年 カリフォルニア州で プラスチック製のストロー禁止
(資料)National Conference of State Legislators(NCSL)よりまとめ
*本稿は、2018年11月28日環境新聞に掲載されました。