国内でも来年から使い捨てレジ袋が有料化されることになった。ストローやレジ袋だけでなく、包装容器やコーヒーカップに至るまで、使い捨てプラスチック製品の抑制に向けた取組が急速に広まっている。こうした動きを先導したメッセージの一つは、イギリスのエレン・マッカーサー財団が2016年に発表した、「今のペースでプラスチックの利用を進めていけば、2050年には、海中の魚の重量と廃棄プラスチック量が同じになる。」という衝撃的な試算だ。
エレン・マッカーサー財団は、欧州が提唱する循環型社会、サーキュラー・エコノミーへの変革を加速することを目指す財団で、ヨットで世界一周を果たしたエレン・マッカーサーが、イギリスのBT、ナショナル・グリッドやルノーなどと共に2010年に設立した。マッキンゼーやイギリスのArup社などを提携パートナーとして、様々なレポートを作成し、政策提言も行っている。
このエレン・マッカーサー財団が、プラスチックに続いて課題としているのが、衣料品・アパレルである。ファッション業界は、世界全体で約150兆円の市場規模があり、約3億人が従事している。日本では90年代のバブル期よりも低迷しながら、現在、約10兆円の市場であるという。
新興国経済の発展に伴う中間所得層の増加やファスト・ファッションの普及により、衣料品の生産量は過去15年で約2倍に増加した一方、衣料品のリサイクルはわずかな割合にとどまっている。製造段階で素材のリサイクルは数%に留まっており、製造された衣服の7割以上は廃棄又は焼却されている。世界中で廃棄される衣料品は、毎年約50兆円以上の価値になるという。また、世界全体の産業用排水の約2割は、繊維の染色と処理に関わるもので、大量の水を利用するほか、衣料品業界から排出されるGHGは年間約12億トンあり、世界全体の国際航空便と船舶によるGHG排出量を上回るという。このほか、ナイロンやポリエステルなどの繊維を洗浄する際に流出するプラスチック・マイクロファイバーは世界全体で年間50万トン流出され、海洋プラスチック汚染の一つとしても指摘されている。
同財団では、このような現在の衣料・アパレル業界の、大量消費・大量廃棄の流れを変え、循環型の枠組みをつくっていくために、以下4つの提案をしている。①製造過程における有害物質の使用禁止、②衣料品の使用頻度を高める、③リサイクル率の大幅な改善、④資源の有効利用と再生可能資源の投入を行う。
衣料品業界の仕組みの改善を呼びかけているが、今後より詳細なデータ収集も必要であるとしている。
衣料品の持続可能性を改善するためのこのプロジェクトには、ファスト・ファッションとして知られるH&M(スウェーデン)やC&A(ドイツ)をはじめ、ナイキ、アディダス、ギャップなども参加メンバーに含まれている。
日本国内では、ユニクロを展開するファーストリテイリングが2006年から全商品のリサイクルを行っている。
4つのそれぞれの要素にはサプライチェーン全体に加え、消費者の価値観や生活スタイルの変容も求められる。プラスチックと共に長期的なテーマになりそうだ。
本稿は環境新聞2019年9月18日号に掲載されました。