サステナビリティに関する開示基準の策定へ

国内企業の企業会計基準を策定する公益財団法人財務会計基準機構(ASBJ)は、昨年末、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)を2022年7月1日に設置することを公表した。 21年10月にASBJは定款を変更し、事業内容に、会計基準に加えて、「サステナビリティ報告基準」という文言を追記しており、会計に加えて、サステナビリティに関する開示基準を策定する方向だ。

こうした動きの背景には、国際的にサステナビリティの開示基準の策定が着々と進められていることにあるだろう。国際会計基準を策定するIFRS財団は、昨年、COP26の直前に国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)の設立を発表したが、11月には、気候変動に関する開示基準のドラフトと補完文書等を公表している。

このドラフトは、CDSB(Climate Disclosure Standard Board)、TCFD、Value Reporting Foundation(GRI, IIRCとSASBの統合した組織)、世界経済フォーラムの連名で発表されており、今年(22年)6月に公表される予定の基準の骨子が示されているといえるだろう。

補完文書は580ページを超え、11セクター(68業種)の記載項目や指標案が記されている。今回のドラフト文書で注目すべき点は、気候変動に関する3つの開示指標であろう。3つの指標(Metrics)とは、“業界共通の指標”、“業界別の指標”、そして業界別に企業の開示データを比較する際に参考項目となる“活動指標”である。業界共通の指標は、TCFDの考え方がベースになっているようだが、業種別の開示指標は、もともと業界別の重要項目を整理していたSASBの考え方がベースになっているようだ。

財務や企業価値に影響を与えるサステナビリティに関する重要事項は開示すべきという考え方が示されている。このため、エネルギー使用量やCO2をはじめとする温室効果ガス(GHG)の排出量など気候変動の緩和や、甚大化する自然災害への予防策など気候変動の適応に関する情報に限定されず、一部の業界別指標には、水、大気汚染、廃棄物などその他の環境要素や、調達等における社会的リスクに関する説明項目も含まれている。情報開示の範囲は、財務報告の範囲と同じであり、事業領域が複数の業種にわたる場合には、その重要性を踏まえて開示すべきとしている。

これらのドラフトは、今後のパブコメなどを経て変更される可能性はあるものの、開示基準に関する議論のベースとして、気候変動に次いで策定されるサステナビリティ全体の開示ルールにも影響するものとなるだろう。

国内でも企業会計基準を策定するASBJが基準策定を本格的に始動する。今年は、企業のサステナビリティに関する開示ルールについて大きな動きがある年になりそうだ。

本稿は環境新聞(2022年1月19日)に掲載されました。