アフターコロナを見据えた経済政策とサステナビリティ

わが国でも緊急事態宣言の段階的解除により、少しずつ経済再開ができる環境になってきた。過去にない経済活動の中断を経て、少なくとも今後しばらくは、これまでと違った働き方や生活様式が求められる。中長期的な社会の変革を見極めつつも、当面の経済活性化に向けて各国で様々な経済政策が打ち出されている。

現在、各国で出されている法政策や事業活動の動きを一部紹介したい。

中国では、2020年4月下旬に固形廃棄物環境汚染防治法が再改正され、2020年9月から施行される。産業廃棄物や有害廃棄物の管理強化、農業や家畜などの農業廃棄物の管理強化に加え、海外からの固形廃棄物の受入を将来的にゼロにすることも明記されている。

一方、企業の経済再開を後押しするためとして4月初旬に、今後、約21,000の建設プロジェクトでの環境影響評価の手続きを簡素化するとの通知が生態環境部から出された。良く知られるように中国の環境影響評価の手続きは、工場などを含む建設事業において重要な手続きである。今後増加する見込の再生可能エネルギーの蓄電プロジェクト等の大型建設事業が迅速化することが予想される。

アメリカでは、5月上旬に著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイ社の関連会社が行う大規模な太陽光発電事業が承認された。ネバダ州ラスベガス北東部で計画されている事業規模1000億円超の太陽光発電プロジェクト(Gemini Solar Project)は、米国内で最大規模となり、690メガワットの発電規模をもつ。約26万戸の住宅をカバーする電力供給量を持ち、ネバダ州とカリフォルニア州南部にも電力供給する予定と伝えられている。約2年後に完成する予定の同プロジェクトでは、過半の規模の蓄電システムも導入する。

このプロジェクトは、国務省の土地管理局(Bureau of Land Management)が管理する国有地で進められており、トランプ政権による国有地をエネルギー関連事業等に開放する規制緩和によって可能になった。建設段階で約900人の雇用創出効果もあり、コロナ後の経済活性化にもつながるとみられている。

こうした大規模プロジェクトには、環境影響評価などの複数の許認可手続きが必要であり、その長期化が課題となっていたが、許認可の短期化や透明性も高められているようだ。連邦政府のウェブサイトでは、複数の環境法等に関わるインフラ・プロジェクトの許認可の進捗状況がオンライン上で確認できる。

欧州では、昨年12月に公表した欧州グリーン・ディールの具体的施策の一部として、3月に欧州サーキュラーエコノミーのアクション・プランが公表された。コロナ後の経済活性化において、欧州グリーン・ディールを強化すべきとの声もある。

イングランド銀行では、金融機関の気候変動ストレス・テストを2021年半ばまで延期するなど、スケジュールの調整もでているが、中長期的には、各国ともに環境とサステナビリティに配慮し、様々な危機にも対応しうる社会インフラが整備される方向になりそうだ。

本稿は環境新聞(2020年5月20日)に掲載されました。