COP26会議の前にイタリアのローマで開催されたG20首脳会議では、終了後に取りまとめられたG20ローマ首脳宣言において持続可能な社会に向けた様々な論点が挙げられた。
その一つは、気候変動のための移行及びサステナブルファイナンスに向けて、10月に公表された「G20サステナブル・ファイナンス・ロードマップ」を承認したことだ。
これを踏まえ、国際会計基準を策定するIFRS財団は、来年6月の新組織設立に向けたニュースリリースを公表した。
ニュースリリースは下記3つの内容を発表している。
第一に、国際サステナビリティ基準委員会(International Sustainability Standards Board, ISSB)を新たに設立することだ。投資家のニーズに応えられる信頼性の高いグローバルな基盤となるサステナビリティの開示基準を策定すること。
第二は、このISSBは、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)の組織となる気候開示基準委員会(Carbon Disclosure Standards Board, CCSB)とValue Reporting Foundation (VRF) (統合報告ガイドラインの設立団体とSASBの統合組織)を統合する形で新たな委員会をつくるとし、各組織から参画する役員も公表した。
第三に、IFRS財団が優先的に策定する気候変動関連の情報開示は、今後6か月の作業に基づき、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)と世界経済フォーラム(World Economic Forum、WEF)、そして証券監督者国際機構(IOSCO)と共に開示基準を策定するとしている。
英略語で呼ばれることが多い組織であり、なじみにくいところがあるが、今回の発表により、これまで乱立してきたサステナブルな開示基準が、いよいよ統合する方向となっていること、そして、その開示基準は投資家目線のものになる方向だということが読み取れる。
これまで日本企業をはじめ、サステナビリティレポートの開示指標となっていた包括的なESG開示指標であるGRIは、投資家を含む様々なステークホルダーを対象とする開示基準であり、マルチステークホルダー向けとされている。一方、TCFDや業界別の指標を策定するSASBはより投資家向けの指標である。これらの指標の特徴は、数値による開示が多く、このため比較可能性が高いこと、また企業価値への影響を重視しており、そのため投資指標との統合も進みやすいことである。昨年、4大監査法人と世界経済フォーラム(WEF)の策定した開示ルールも数値化できる指標をベースとしている。
来年6月以降に、気候変動に関するISSBの開示ルール案が公表されると、これまでのTCFDやSASB等が徐々に収れんしてくる可能性が高いだろう。気候変動に続き、自然資本(土地や水、森林、生物多様性等)についての開示ルールも整理される。2022年はこうしたサステナビリティ開示ルールが徐々に整理される一年となりそうだ。
*本稿は環境新聞(2021年11月17日発行)に掲載されました。