中国各地の条例

諸外国では、国の法律と州や省などの条例が日本以上に大きく異なり地域もある。

中国は国の法律以前に省の条例ができる地域がある一方、国の法律制定後、具体的な実施に向けて省の条例が制定される場合もある。

800社以上の日系企業が進出している中国の広東省では、2019年3月1日から、大気汚染、廃棄物、土壌汚染に関する3つの条例が施行される。「広東省大気汚染防止規制」、「広東省固体廃棄物汚染環境予防および管理規制」及び中国の土壌汚染防治法の広東省内での施行規則を定めた「実施要項」だ。

いずれも国の法律が発行された後、具体的な執行に向けて省で規則が定められるもので、今回の3つの条例等のうち、大気汚染、廃棄物に関しては、国の法律よりも一部厳しい規定等が定められている。

中国では深刻な大気汚染に対処するため、2016年1月から、15年ぶりに改訂された大気汚染防治法が施行され、その後多くの省で条例が制定されている。

広東省の条例では、改正法に加え、上乗せ規制がある。例えば、VOC(揮発性有機化合物)の含有量の多い製品等の情報開示、大気汚染の自動監視装置の設置、ボイラーや発電施設における燃料の規制、環境負荷の高い製造施設等の新設の禁止などがある。また、自動車や農業機械等の移動源に関する規定では、修理工場の出荷情報なども登録することが求められ、自動車検査のデータを登録し、排ガス基準を満たさない車両の運転を禁止するほか、個人に対しても罰金が課される。また、アスベストの規制も明確化された。

廃棄物については、2005年に制定され、2017年3月に改訂施行されていた固体废物污染环境防治法を踏まえ、いくつか広東省として厳格な措置等がだされている。

廃棄物の発生事業者、処理事業者等に情報の記録、保管などを求め、電子情報による発注や管理を求めている。また、法令に違反した場合には、法人(最大20万元)及び個人(最大2000元)への罰金が課される。

土壌に関しては、2018年12月には北京市で、2020年までの土壌汚染対策に関する方針が示された。北京市では、2018年末まで農地における土壌汚染調査をほぼ完了し、2019年末にはおもな産業用地、2020年末には工業用地や未利用地の土壌汚染調査を完了することを計画している。また調査によって発覚した汚染地や汚染懸念地を登録し、データベース化することが示されている。

近年、あらたに規定されるアジア各国の法令には、環境法遵守の執行のためにITや最新技術が活用されている。

中国も例外ではない。環境法政策やその執行において、電子データやITが活用され、法執行を迅速かつ網羅的に実施すると共に、違反の確認や是正もしやすい仕組みが構築されている。

同時に、環境の法令遵守の状況やリスク管理において、金融機関の融資評価や保険などを組み合わせ、企業経営にインセンティブも与えている。汚染排出の多い施設や企業に対しては、操業停止や工場閉鎖など強い法的執行手段を使って環境負荷の低減に取り組み、環境負荷の低い企業を経営面からも評価する方法だ。生産性の低い老朽技術や施設を、環境汚染の改善と共に刷新し、産業構造の最適化を図るという方針が、法令文書の中にも明示され、産業全体の意識改革にもつなげていこうとしている。

急速な経済成長に伴う深刻な環境汚染は、環境技術の活用や新規技術の開発に向けた潜在市場ともいえる。法整備が整い、強い法執行のもとで、有用な環境技術の活用も推奨されている。優れた環境保全ビジネスが生まれる市場が整えられてきているともいえるだろう。

条例等が施行・提案されている中国の省・市等(大気・廃棄物・土壌)
分野 省・市等(施行時期) 提案段階等
大気汚染
*一部、省エネビル、悪臭等の規制も含む
江蘇省(2018年8月~/2018年10月~)
湖南省(2018年10月~)
河北省(2018年11月~/2019年1月~)
山東省・河南省(2018年11月~)
四川省・福建省・天津市(2019年1月~)
上海市(2018年11月~/2019年1月~)
遼寧省(2019年2月~)
広東省(2019年3月~)
北京市(2019年3月~/9月~)
河北省
広東省
浙江省
廃棄物 浙江省(2018年4月~)
陝西省(2018年9月~)
江蘇省(2018年10月~)
安徽省(2018年11月~)
河北省(2019年1月~)
広東省・天津市(2019年3月~)
遼寧省
土壌 浙江省(2018年4月~)
上海市(2018年8月~)
福建省(2018年9月末~)
河南省(2018年10月~)
広東省(2019年3月~)
北京市(3か年計画:2018-2020)
 

*上記は主に昨年後半以降。

*本稿は、2019年2月20日環境新聞に掲載されました。