女性活用とダイバーシティ

2014年3月

官民組織において、女性管理職の抜擢等に関する報道が続いている。日本では、まだ女性の管理職が少ないが、女性の活躍推進を促す取り組みが広く受け入れられるようになってきた。また、女性が外で仕事をすることを通じて様々な経済効果も生まれるとして、成長戦略の一環としても女性活用推進が進められている。政府は2020年までに指導的役割につく女性の割合を30%とする目標も掲げている。

女性の就業を維持し、増やすと共に管理職層における女性の割合を増やすなどの施策は、CSRにおいて、“多様性(ダイバーシティ)”と呼ばれる。

ダイバーシティは、社員や働く人の性別や年齢、人種や宗教等の多様性を認めることをさし、労働市場における人材が多様化しているアメリカや欧州において取組が進められてきた。

日本でも近年、“ダイバーシティ経営”が推奨されており、経済産業省では、毎年ダイバーシティ経営企業100選を選定している。

ダイバーシティ経営とは、“多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営”(経済産業省)と定義されており、多様な人材の定義には、働き方やキャリアの多様性も含めている。

人材の多様性は、企業経営においてどのようなプラス面があるのだろうか。

第一には、企業の製品やサービスに対する多様な見方や評価の醸成である。消費財をはじめ、家庭で必要な多くの商品は女性が購入の意思決定を行うことが多い。商品の開発や販売を担当する社員が、顧客としての側面を持つことができれば、顧客の意見や立場を代弁することができ、商品開発や販売方法に反映することができるだろう。

第二に、社内が多様な価値観や経験をもつメンバーから構成されると、自社では当たり前に実施されていた様々な業務内容について、不要なプロセスや成長機会がある分野等の“気づき”が生まれる可能性もある。画一的な価値観では生まれにくい新たな発見と共に、課題や問題点にも気づき、リスク管理につながる可能性もある。

第三には、意思決定における透明性が高まることが挙げられるだろう。多様な価値観を持つ人が集まると、日本的な「あうん」の呼吸が通じない場面が生じる。このため、意思決定のプロセスや判断の根拠を説明する、または明示する必要が生じる。改めて経緯を説明することで、意思決定の手続きが透明になり、誰にでもわかりやすい文書化も可能になる場合がある。

CSRの取組は、短期的には効果が見えにくいものが多いが、中長期的には企業の経営基盤を強固にする取り組みにつながる。

社会全体において生き方や生活スタイルが多様化する中で、企業内の人材の多様性を認めて広げていくことは、地域社会との共生する組織に求められる方向性に適っている。

4月は新入社員の入社や人事異動などにより、組織の変化が多い時期である。多様な価値観をもつ人材の能力と個性を活かす“ダイバーシティ”を活用し、組織の目標達成に向けた取組を再スタートする好機になろう。

*本稿は、2014年3月に通信新聞に掲載された内容を、同社承諾のもと一部編集して転載しています。