ペルーの首都リマで開催された第20回目の気候変動枠組条約締約国会議(COP20)が12月14日に閉幕された。先進国と途上国の双方が、地球温暖化問題に対して取り組むべきという方向性は共有したものの、現時点ではどのような目標設定を行っていくのか確定せず、次回以降に引き継がられることとなった。
これに先立ち、11月はオバマ大統領が中国を訪問した際に、米国と中国が温室効果ガスの削減目標を発表した。世界の中で最も排出量の多い両国が削減目標を発表したことについて国際的にも評価の声がある一方、国内事情や経済社会状況を踏まえて、実現可能なのか等の意見も出されている。また、昨今の原油価格の低下により、省エネ意識が弱まることや、比較的高価な再生可能エネルギーの採算性が難しくなり、普及が遅れるなどの課題も指摘されている。
日本国内のCO2排出量も、2013年度は過去最高になったことが公表された。東日本大震災後に、化石燃料を使用する火力発電の稼働が増加に加え、経済活動が活発化していることなどが背景となっている。温暖化対策は地球規模で取り組まなければならない課題であり、日本企業のCSR目標の中でも中心的な位置づけを占めていた。しかし、その取り組みは徐々に他のCSRの課題とバランスがとられるようになっており、労働問題やダイバーシティ(人材の多様性)、ガバナンス強化など、主要な課題の一つとして位置づけを占めていた。
公害問題の解決後、国内で深刻な汚染問題が出されることは少ない。豊富な水源や自然環境があり、生活に必要な社会資本も整っている。電気代は世界的にも高いが、停電は少なく、GDP比のエネルギー効率では世界最高水準を維持している。深刻な環境・エネルギー問題を日常生活で実感することは少なくなりつつある。
しかしながら、高齢化社会に向けてこれまでと異なる枠組みで解決すべき問題も増えてきている。高度経済成長期に建設された、老朽化するインフラや住宅、公共施設や産業・商業施設など、今後地域の自然環境の中で放置せずに適切に管理、または一部は解体して集約を進め、コンパクトシティの形を目指すことも必要になるだろう。こうした取り組みは、自然災害への対策にも役立つと考えられる。
環境問題には、地球規模で解決する問題だけでなく、地域固有の様々な課題もある。例えば、地域の水源や湖沼、大気、土壌、廃棄物や有害物質等の問題があり、近年は大気汚染や海洋汚染など地域規模の問題もでている。
新年を迎え、国内では経済対策として地方経済の活性化も進められる方向となっている。日本の規制の多くは全国一律となっているが、各地域に固有の環境問題や自然災害もある。日本全国の地域固有の課題解決に企業が積極的に取り組むことによって、技術やサービスの革新があらたに生まれる可能性も高い。これによって世界各地の地域規模の環境問題にも貢献できるようになるだろう。
*本稿は、2014年12月に通信新聞に掲載された内容を、同社承諾のもと一部編集して転載しています。