環境や労働、社会貢献などサステナビリティやCSRに関わる情報の開示は、過去20年間に変化しつつ大きく進展した。多くの上場企業では毎年、情報開示することが定着しつつあり、先般金融庁で策定されたコーポレートガバナンス・コード案が東京証券取引所で2015年6月1日から適用されることになった。今後この流れはより大きくなるであろう。
同コードには、「取締役会は、サステナビリティー(持続可能性)を巡る課題への対応は重要なリスク管理の一部であると認識し、適確に対処するとともに、近時、こうした課題に対する要請・関心が大きく高まりつつあることを勘案し、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討すべきである。」(東京証券取引所:コーポレートガバナンス・コード、原則2-3、補充原則)と記載されている。
1990年代に企業の環境報告書が発行され、有価証券報告書などの財務報告書とは別に環境社会、サステナビリティやCSRレポートが発行されてきた。環境省のガイドラインと共に、国際的な非営利団体であるグローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)が、CSRレポートの開示に関するガイドラインを発行し、CSRレポートの開示項目等に関する世界的なデファクト・スタンダードとなった。
その後、サステナビリティ・CSRに関する情報を財務報告と一体化してアニュアルレポートとして開示する統合報告書の発行が提唱され、現在国内でも統合報告書を発行する企業が増えている。
統合報告書は、サステナビリティ・CSRレポートの内容を、財務報告と一体化し、企業経営全体の状況や方向性を示すものとして、コンパクトに社会や環境に関する開示をするものであり、今後も拡大する見込みである。
一方、これらの開示情報は、企業の今後の成長や財務状況を評価するうえでも重要な情報であることから、投資家等の間で同じ業種間で評価できるような一定の共通の枠組が必要であるという意見も大きくなっている。欧州や米国では、社会的責任投資と呼ばれる社会や環境に配慮した企業や事業に投資する資金規模が大きく、評価の枠組みをより整備していくために、開示情報の枠組みを業種別に共有していくための動きも活発になっている。
米国に設立されたサステナビリティ会計基準審議会(SASB)は、数年前から業種別の社会・環境情報のうち、重要性の高い項目を整理してガイドラインとして公開している。
このSASBが、5月に2014年の年次報告書を公開し、主要業種のサステナビリティに関する課題や開示動向等を概説している。
日本国内には、業種別の重要事項をとりまとめた情報がまだ整備されていないこともあり、今後コーポレートガバナンス・コードと共に、取締役会での議題をどのように取りまとめるかを検討する際には、これらの海外での枠組みを活用することができるだろう。
*本稿は、2015年5月に通信新聞に掲載された内容を、同社承諾のもと一部編集して転載しています。