コーポレートガバナンス・コード案の公表

2015年1月

2014年12月、金融庁から「コーポレートガバナンス・コード案」が公表された。昨年2月に公表された投資家向けの「日本版スチュワードシップ・コード」に続き、主に上場企業を中心に、コーポレートガバナンスの考え方を取りまとめたものである。持続的成長に向け透明性・公平性を確保しつつ、迅速・果断な意思決定を進めるうえで重要な原則であると位置づけている。

2014年6月に公表された政府の「日本再興戦略」改定版のなかで、金融庁及び東京証券取引所で2014年秋頃をめどに取りまとめる予定とされていたものが、予定通り年内に公表された形となっている。

本コード案では、まずこのコードを上場企業が実践することを原則としており、実践しない場合には、その理由を説明するという「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守又は説明)」という海外で一般的な実施原則が盛り込まれている。

CSRに直接関連する内容としては、第2原則に、(株主以外の)ステークホルダーの重要性が示されており、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会との適切な協働を推進することが重要であるという認識が示されている。この背景として、世界的に社会・環境問題への関心が高まっていることから、いわゆるESG(環境、社会、統治)に対して積極的・能動的な対応も有用であるとしている。

原則2-1では、社会的な責任の自覚について示されているほか、原則2―3ではより具体的に、社会・環境問題などのサステナビリティ(持続可能性)をめぐる課題についての対応をすべきとしている。

さらに「適切な情報開示と透明性」として、基本原則3には、財務情報だけでなく、非財務情報をわかりやすく提示するとしている。

本コード案は、2015年1月下旬までのパブリックコメントを経て正式な発行となる予定である。これまで明確に示されていなかった企業の統治原則の中に非財務情報の重要性が示されたことにより、今後上場企業を中心にCSRの取組や開示情報の拡充が検討される可能性もある。

日本では、上場企業の約3割の企業がCSRレポートやサステナビリティ報告、近年では統合報告書などを発行している。報告書の発行数は国際的に見ても高い割合となっている。

一方、国内外の企業を問わず、これらのCSRレポートやサステナビリティ報告への開示内容は開示の範囲や報告テーマの相違から、一部の項目を除いて比較評価が難しいという課題も残されている。このため、サステナビリティに関する事業や業界別の共通重要項目を取りまとめる動きが広がっているほか、報告範囲として、財務情報と同様の範囲で非財務情報を開示することが推奨されている。

今後、上場企業を中心に一定の影響があると思われる本コード案がどのような形で正式に発行されるのか注目される。

*本稿は、2015年1月に通信新聞に掲載された内容を、同社承諾のもと一部編集して転載しています。

2014年12月、金融庁から「コーポレートガバナンス・コード案」が公表された。昨年2月に公表された投資家向けの「日本版スチュワードシップ・コード」に続き、主に上場企業を中心に、コーポレートガバナンスの考え方を取りまとめたものである。持続的成長に向け透明性・公平性を確保しつつ、迅速・果断な意思決定を進めるうえで重要な原則であると位置づけている。

2014年6月に公表された政府の「日本再興戦略」改定版のなかで、金融庁及び東京証券取引所で2014年秋頃をめどに取りまとめる予定とされていたものが、予定通り年内に公表された形となっている。

本コード案では、まずこのコードを上場企業が実践することを原則としており、実践しない場合には、その理由を説明するという「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守又は説明)」という海外で一般的な実施原則が盛り込まれている。

CSRに直接関連する内容としては、第2原則に、(株主以外の)ステークホルダーの重要性が示されており、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会との適切な協働を推進することが重要であるという認識が示されている。この背景として、世界的に社会・環境問題への関心が高まっていることから、いわゆるESG(環境、社会、統治)に対して積極的・能動的な対応も有用であるとしている。

原則2-1では、社会的な責任の自覚について示されているほか、原則2―3ではより具体的に、社会・環境問題などのサステナビリティ(持続可能性)をめぐる課題についての対応をすべきとしている。

さらに「適切な情報開示と透明性」として、基本原則3には、財務情報だけでなく、非財務情報をわかりやすく提示するとしている。

本コード案は、2015年1月下旬までのパブリックコメントを経て正式な発行となる予定である。これまで明確に示されていなかった企業の統治原則の中に非財務情報の重要性が示されたことにより、今後上場企業を中心にCSRの取組や開示情報の拡充が検討される可能性もある。

日本では、上場企業の約3割の企業がCSRレポートやサステナビリティ報告、近年では統合報告書などを発行している。報告書の発行数は国際的に見ても高い割合となっている。

一方、国内外の企業を問わず、これらのCSRレポートやサステナビリティ報告への開示内容は開示の範囲や報告テーマの相違から、一部の項目を除いて比較評価が難しいという課題も残されている。このため、サステナビリティに関する事業や業界別の共通重要項目を取りまとめる動きが広がっているほか、報告範囲として、財務情報と同様の範囲で非財務情報を開示することが推奨されている。

今後、上場企業を中心に一定の影響があると思われる本コード案がどのような形で正式に発行されるのか注目される。

*本稿は、2015年1月に通信新聞に掲載された内容を、同社承諾のもと一部編集して転載しています。