アメリカ:PFASのロードマップと予算措置

米国環境保護庁(U.S.EPA)は、10月に、PFAS(パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル化合物)に関する2024年までの取組をまとめた戦略的ロードマップを公表した。

すでによく知られるように、PFASは、PFOSやPFOAを含めた数千以上に及ぶ化学物質で様々な産業分野や製品等に使用されている。

ロードマップでは、飲用水、大気、土壌などの媒体別となっている部局別に今後の取組予定が示されており、規制強化の動きが示されている(下表参照)。

飲用水については、今年中に規制が制定される見込みといわれていたが、モニタリング手法などの確定を先行し、規制案は2022年に公表され、最終規制は2023年秋に制定する予定が示されている。

バイデン政権は、同時に各省庁でのPFASの取組をまとめたニュースリリースを公表した。ここには、バイデン大統領が11月中旬に署名して成立した通称インフラ法に含まれる飲用水関連のPFAS取組の予算についても記載されている。州の飲用水基金に40億ドル(約4400億円)、影響のある地域等の飲用水基金には50億ドル(約5,500億円)等が割り当てられ、合計約1兆円の基金がPFASに関する飲用水対策の一部となっている。これらの基金は、米国内の各州に割り当てられ、また州の独自予算を追加することにより、水道インフラ等の改修やPFAS対策が進むことになる。

インフラ法は、米国内の老朽化した橋や道路、電力網などの補修など、約110兆円(1兆ドル)規模の投資の予算が含まれ、環境保護庁(U.S. EPA)には、約5.5兆円(500億ドル)の予算が割り当てられる予定となっており、この一部が上述PFASへの対応基金となっている。

米国では、こうした公的基金による汚染対策を推進することは多いが、これによって汚染原因者による浄化対策等も求められることになり、法的に遡及責任が課されることから企業にとっては大きなリスクとなってきた。

今回のロードマップにおいても、PFASの排出状況等の確認のための執行活用の可能性が示されており、すでに複数の州で動きがあるといわれている。すでに企業の訴訟等も多く、企業にとってはリスクになるとの意見も出されている。

気候変動やサーキュラーエコノミーと並行して、環境リスクの管理は引き続き必要なテーマであり、来年以降の米国の法制化動向にも留意していきたい。

米国環境保護庁のPFASロードマップ(主なアクション)

部門 主な予定
化学物質安全と汚染予防 2022年冬:TSCAに基づくPFAS報告の新ルール
2022年秋:飲用水に関するPFOA/PFOS規制案(2023年秋までに最終規制を策定)
2022年以降:産業用水からのPFASの排水制限
土地及び緊急事態管理 2022年秋:CERCLAの有害物質としての特定のPFASを指定する案の公表(2023年夏までに最終規制を策定)
その他 事業所からのPFAS排出の確認に関する執行ツールの活用

出所)US.EPA, PFAS Strategic Roadmap; EPA’s Commitments to Action (2021年10月)

*本稿は環境新聞(2021年12月15日発行)に掲載されました。