衣料品のサステナビリティは、海外で本格的に動き始めている。
2019年8月に開催されたフランスでのG7サミットの際、マクロン大統領と共に、グッチなどの高級ブランドを率いるケリング社の会長が先導し、世界の150ブランドを管理する32社が”Fashion Pact”と呼ばれるファッション業界の環境配慮協定を締結した。欧米のアパレルブランドのほか、フランスの大手スーパー・カルフールやアメリカの百貨店ノードストラムなども参画している。
この協定では、気候変動、海洋汚染及び生物多様性の3つの主要テーマとしてファッション業界全体でSDGsを取り組んでいく。具体的には、2030年までに、各社の主要なサプライチェーン全体で100%再生可能エネルギーの導入を目指すほか、生態系や自然環境を配慮した原材料の調達、パッケージや包装などにおける使い捨てプラスチックを廃止するとしている。また、共同で実施する取組として、生態系に配慮した調達等を推進するため、綿やウール、カシミヤ、皮革製品などの素材についてサステナビリティの認証を整備し、支援していくとしている。
こうしたなか、ドイツでは、国として、カーペット、医療用品、乳児製品等に分類した布製品の認証制度“グリーン・ボタン”を2019年7月に公表した。
衣料品に関わる環境認証はすでに数十以上あるが、持続可能性に関するこれらの基準を標準化しようとする動きもある。サンフランシスコにある持続可能なアパレル協議会(Sustainable Apparel Coalition)には、大手ブランドやメーカーなど約200社が参加しており、日本からも数社参加している。
衣料品の多くは、中国やベトナムを含めアジアや中東欧の国々で生産・加工されている。このため、持続可能性を高めるためには、大手ブランド企業だけでなく、新興国に所在する委託先工場の環境負荷の低減が不可欠だ。イギリスの大手金融機関HSBCでは、環境影響の8割は、大手企業の下請けであるサプライチェーンにあるとして、2012年から、中国やインド、ベトナム、バングラディシュなどで繊維工場の環境負荷を低減するための取り組みを支援している。2018年からはNGOと、ベトナム繊維業協会で省エネと廃棄物管理を改善する取組を支援している。
法制化も並行して進んでいる。フランスでは売れ残り製品の廃棄を禁止する法律の対象を食品だけでなく、電気製品や衣料品にも広げる方向だ。7月に閣議決定された法律では、衣料品などを含め2023年までに順次執行される予定となっている。
イギリスでは、生産量の過半を占める約80社が持続可能な衣料品のアクションプラン(SCAP)に参加しているほか、消費者向けに衣料品を長く使うことを推奨するウエブサイトもある。また、ファッションと持続可能性に関する教育も始まっている。
欧州から始まっている循環型社会(サーキュラーエコノミー)は、大量生産・大量消費社会という経済成長モデルに対し、消費者の生活スタイルや価値観に気づきを与えるアプローチも加えながら、次世代の社会モデルを模索する動きを始めているといえるそうだ。
*本稿は2019年10月16日発行の環境新聞に掲載されました。