早くも2021年の半分が過ぎようとしていますが、この上半期は、世界でも日本国内でも気候変動や持続可能性に向けた大きな政策や制度の動きがありました。
1月にアメリカでバイデン政権が誕生し、気候変動を政策優先事項の一つに掲げ、4月に各国首脳との気候サミットが開かれました。菅総理は、これに合わせ2030年に46%のCO2削減目標(2013年度比)を発表し、6月に公表された政府成長戦略でも脱炭素社会に向けた「グリーン成長戦略」が同時に公表されました。
東京証券取引所は、コーポレートガバナンス・コードの改訂版を正式に公表し、取締役会における持続可能性に関する関与の強化やESGに関してリスク管理と企業価値向上に向けた取組を進めることを求めています。特に、2022年の市場区分変更においてプライム市場に上場する企業には、気候関連情報の拡充を求めており、TCFDと同等の開示レベルを求めることが明記されています。
国内上場企業に対してこうしたESGや気候変動の情報開示拡充を求めた背景には、欧州をはじめ、先行する海外の政策や取組も背景にあると考えられます。特に、日本企業にも影響のある国際会計基準の設立団体であるIFRS財団が今年2月に、気候関連情報の開示ルールの策定を進める方針を公表し、4月には欧州で気候及び環境関連の定義(タクソノミー)の概要が公表されました。
数年のうちに、欧州の金融機関や企業は、気候変動や環境に配慮した投融資や事業割合を開示することが求められる予定です。欧州の銀行等に対しては2022年から気候関連及び環境リスクのストレステストを開始するため、昨秋、欧州中央銀行はガイドラインを公表しました。資金の流れを通じて気候変動や環境に配慮した社会に変革する具体的な道筋が示されています。
アメリカは、5月下旬に公表されたバイデン大統領令を踏まえ、具体的方針や施策が今秋以降順次公表されることが予想されます
2021年下半期はロンドンで気候変動会議(COP26)も控えていますが、6月に同じロンドンで行われたG7首脳会議では、TCFDに次ぎ、自然資本を考量したTNFD(次頁参照)も提唱されました。今年後半も世界各地で、持続可能性に関連する政策が進展することが予想されます。