海外環境セレクト(2020年5月)

アメリカの環境ビジネス、環境規制、ESG情報、その他各国及び国内の関連情報のなかで弊社が選んだ最新情報を概説し、情報源をお知らせします。(複写・転載はお控えください)

今回は、新型コロナウィルスに関連する記事を多めにまとめました。

 

新型コロナウィルス関連

米国で定義されている緊急時にも必要不可欠な16業種

アメリカでも外出禁止令が出されている州や都市などがありますが、アメリカ国土安全保障省では、緊急時においても重要な16業種について、必要不可欠な基盤事業(Critical Infrastructure Sectors)として指定しており、公表しています。

各州や地方政府、民間企業などは、このガイダンスを参考に意思決定や事業継続をすることに役立ててもらうとしています。

16分野は以下の通りで、詳細は下記のWebページに示されています。

  1. 化学Chemical:
  2. 商業Commercial Facilities:
  3. コミュニケーションCommunications:
  4. 重要な製造業Critical Manufacturing: Sector-Specific Agency:
  5. ダムDams:
  6. 国防産業Defense Industrial Base:
  7. 緊急サービスEmergency Services:
  8. エネルギーEnergy:
  9. 金融サービスFinancial Services:
  10. 食品・農業Food and Agriculture:
  11. 政府施設Government Facilities:
  12. ヘルスケア・公衆衛生Healthcare and Public Health:
  13. 情報技術Information Technology:
  14. 原子力、素材及び廃棄物Nuclear Reactors, Materials, and Waste:
  15. 交通運輸Transportation Systems:
  16. 水・排水システムWater and Wastewater Systems:

https://www.cisa.gov/critical-infrastructure-sectors

背景となっている規定はこちら

https://obamawhitehouse.archives.gov/the-press-office/2013/02/12/presidential-policy-directive-critical-infrastructure-security-and-resil

 

(参考)アメリカ各州のCOVID-19の感染者数等は下記のデータが活用されているようです。

https://www.politico.com/interactives/2020/coronavirus-testing-by-state-chart-of-new-cases/

 

感染予防のため、使い捨てプラスチック禁止令を一時停止する動き

新型コロナウィルスの感染予防のため、使い捨てプラスチック・バッグ(レジ袋等)を禁止していたアメリカの州や都市で、法令を一時停止し、リサイクル袋などの利用を抑制する動きが出ています。

3月末に東部ニューハンプシャー州で、再利用の袋を州として初めて禁止しており、その後、カリフォルニア州サンフランシスコ周辺やニューヨークなどでも同様の動きになっています。

カリフォルニア州では、食料品店などでのプラスチック製レジ袋の使用の際に、10セントを課金する措置を60日間停止するとしています。

欧州及び米国のプラスチック業界団体では、衛生上の観点からも使い捨てプラスチックレジ袋は有用だとして、プラスチック製袋の禁止や課金などの法制度の施行を延期するように呼び掛けており、アメリカでは、小売業で働く労働者組合からもそのような声があったようです。アメリカは各州での規制を延期するなどの措置が取られていますが、欧州では、2019年6月に制定された使い捨てプラスチック指令の各国での施行延期が要望されていましたが、現状ではEUとして延期される動きはでていないようです。

 

COVID-19の水道ビジネスへの影響

米国水道協会(The American Water Works Association, AWWA)と都市水道局協会(The Metropolitan Water Agencies, AMWA)は、COVID-19の水道事業への経済的な影響についてのレポートを公表しました。

  • COVID-19により、米国でも外出規制が出され、在宅勤務が増えることにより、水道利用についても、非住宅といわれる商業や産業の利用量が減少し、在宅が増えることにより、住宅利用が増える。
  • もともと、米国の飲用水の非住宅利用は約29%、住宅は72%となっているが、非住宅は35%減、住宅は8%増と試算されている。非住宅のうち、最も減少が大きいのは娯楽レジャー・宿泊などのセクターで、中程度の影響があるのは小売・製造・建設業が含まれている。
  • 非住宅利用の減少と、住宅内利用の増加、また費用などを踏まえると、飲用水については、139億ドル(約5兆円)の減少となる。
  • 排水に関しては、産業活動の減少により、9%程度の減少となり、125億(約1.4兆円)ドルの減少とが予想されている。
  • 飲用水、排水を合わせて約270億ドル(約3兆円)の収入減少が予測され、今後の維持管理の更新投資に遅れなどの影響がでることも考察されている。

 

https://www.awwa.org/Portals/0/AWWA/Communications/AWWA-AMWA-COVID-Report_2020-04.pdf

 

環境ビジネス関連

Environmental Business Journal社の最新号(No.1/2, 2020)は、環境分野における技術トレンドです。約60頁のレポートに、AI, IoT, ドローン、3Dプリンター、ブロックチェーン、蓄電システム、衛星技術、リモートセンサー等様々な技術と環境ビジネスへの影響について、アンケート調査結果が示されています。また、AECOM, TRCなどの大手企業へのインタビューを通して各社がどのように技術をとらえているか、なども示されています。

https://ebionline.org/product/environmental-cutting-edge-technologies/

 

ESG関連

2020年3月31日に、日本取引所と東京証券取引所は、“ESG情報開示実践ハンドブック”を公表しました。ESGの重要な課題(マテリアリティ)を評価し、各社の事業戦略と結び付けながら、継続的にPDCAを回すことを推奨しています。ハンドブックは本編と概要編があり、主に上場企業を対象としているようです。

https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/esg-investment/handbook/index.html

 

海外環境規制

中国:経済政策迅速化のため、環境影響評価を一部緩和の方向性

2020年4月13日に中国生態環境部で指針が公表され、今後、経済回復のため実施する約21,000のプロジェクトで、環境影響評価の実施プロセスを簡素化する方針が示されています。対象となるのは主要な10部門、30セクターが対象となっており、経済活性化政策の一部という位置づけになっているようです。

http://gdee.gd.gov.cn/hbxw/content/post_2970616.html

(参考)中国では、環境影響評価は非常に重要な環境規制の一つで、官民の建設・改築等のプロジェクトの許認可システムに不可欠な手続きとなっています。施設や工場の操業許可等にも関連しており、環境影響評価の許可が下りないと、建設等の事業を進めることができません。最近では、2019年1月に施行された土壌汚染防治法に関連し、2019年7月から一定規模以上の建設等のプロジェクトに土壌汚染に関する手続き等も追加されていました。

PFAS関連
ワシントン州:食品パッケージにPFAS禁止案

2022年の施行を目指し、ワシントン州で食品用のトレーや紙のラッピング、持ち帰り用容器等に、PFASの使用を禁止する法案を策定し、政策評価を実施しています。

https://www.ezview.wa.gov/site/alias__1962/37610/desktopdefault.aspx?alias=1962&PageID=37610

Bloombergによると、アメリカ国内では同様の規制を検討している州が13州以上あるとしており、PFASの禁止の動きは広がる方向が予想されます。

 

カナダで破棄されたパイプラインや井戸の跡地等の浄化

カナダでは、石油やガスの採掘後の井戸やパイプラインの跡地等を浄化するため、17億カナダドル(約1,200億円超)の政府基金を、アルバータ州、ブリティッシュ・コロンビア州、サスカチュワン州内の井戸等の浄化に拠出する政策が始まり、5月1日から石油関連サービス業が補助金を受けるようです。アルバータ州だけでも7万か所を超える井戸がすでに廃止されており、活動が停止されている井戸も数万カ所あると言われています。補助金は、浄化費用の25-50%をカバーするという位置づけになっていますが、新型コロナウィルスにより生産高が減少した石油関連事業の雇用を支援する取組ともいわれています。

 

(参考)カナダでは、土壌浄化の浄化の枠組みが、大きく3つ(①国有地、②エネルギー関連の施設や土地、③民間の施設や土地)に分かれており、エネルギー関連の施設や土地については、国家エネルギー委員会が管轄しており、ガイドライン等が規定されています。その他の民間の工場や土地は州法に基づき浄化義務等が課されますが、エネルギー施設については、国の管轄となっています。