イギリス政府が先月、今後の国としての長期環境計画を発表しました。
冒頭のメイ首相のメッセージには、次世代に向けた中長期の環境戦略として、大気や水、動植物の保全と共に、個別テーマとして、(歯磨き粉などに含まれる)マイクロビーズの禁止やプラスチックバッグの削減などにも触れられています。
全体としては、単に環境保全を目指すものではなく、経済戦略と連動した、国の環境保全方針となっているようで、2017年11月に発行したイギリスの経済産業戦略を実現する中核をなすものと位置付けています。自然環境の保全により、自然資本の価値を高め、産業振興を実現し、経済発展と両立することを目指しています。
温暖化・気候変動の問題が世界的に認知され、共有化されてきたためか、この計画では、「自国の自然環境の保全を進めることで、様々な年齢や背景をもつ人々に、心身両面での人への健康にもつなげていく」とする方針がより鮮明に掲げられています。環境分野におけるグローバル視点から、国内視点に少しシフトし、自然環境の保全と個々人の健康で豊かなライフスタイルの実現に向けて目を向けてきた印象です。
実際、計画の第一章に、「土地の持続的な利用と管理」が掲げられているように、都市、住宅地、農地、森林、河川等を含め、国土と健全な土壌の管理をいかに適切に行っていくかということを重視しているようです。自然環境を保全することは、そこから、人の生活に不可欠な、食物、大気、水、エネルギー源等を得ているという理解と共に、環境へのリスペクトであるとして、次世代の繁栄にも不可欠であるというメッセージが示されています。さらに、欧州からの離脱(Brexit)をその機会として活用するGreen Brexitの考え方も出されています。
イギリス経済の大きなチャレンジ(課題)として挙げられている、下記4つのテーマは日本と共通するものです。自然環境の保全についても、四方が海で囲まれた島国という点では、共通する要素も多いため、今回の環境計画は、日本にとっても興味深く読むことができるように感じます。
①人口知能(AI)やデータエコノミー(AIとData Economy)
②クリーンな成長(Clean Growth)
③人・モノ・サービスの移動(Future of Mobility)
④高齢化社会(Ageing Society)
それぞれの専門領域や関心によって読む視点は異なると思いますので、機会がありましたら、皆様のご意見やご関心を個別に共有させて頂ければと思っております。
レポート本編ほか、各種資料がでておりますので、ご参照ください。