少し前になりますが、3月下旬に開催された審議会の小委員会で、これまで配布されていた紙の資料がなくなり、iPadに資料やデータが入る形になっていました。
環境関連も実務もまだ紙が多いですが、昨年は計量証明書の電子発行が正式に認められ、今後、国内でも環境関連データの電子化が進むことが期待されます。電子化が進むためには、
届出等の窓口となる地方自治体等において電子納品等を認めて頂くことが重要で、それによってようやく紙と電子の重複報告の必要がなくなります。
電子化の進んでいるアメリカでも、民間企業で電子報告は進んでいる一方、行政手続き関連は紙が多く、オバマ政権でも今後の環境戦略の一環として環境データの電子化を掲げていました。
環境保護庁(EPA)も電子報告を推進していますが、EPAの規制に基づく書類の提出等を電子報告で認める手続きは2005年に制度化され、各州で導入される電子報告等のシステムが、一定の要件に沿うかどうか、連邦EPAに承認してもらう手続きを取っています。
現在、各州で分野別に電子報告の取組が進んで状況が公表されており、全体としては水関連、大気関連の手続きが多いようです。
とはいえ個別分野や州・他の政府組織で電子利用が進んでいるところも多く、化学物質や事故報告などについては電子手続きが進められ、電子報告の義務化や推奨が進んで、それらの情報を加工した情報開示は大きく進んでいます。予防や対策につなげる動きも取り組まれており、新たなプログラムも出てきています。
例えばアメリカ商務省で公開されている油や化学物質の漏えい事故の地図上の公開はとてもわかりやすい仕組みです。(5月下旬まで、事故のオフサイト影響に関する規制変更についてパブコメが再度実施中)
これらの工場事故や漏えい等の影響が自分の住宅などに及ぶかどうかについては、EPAが地図上で簡易判断できるシステム(VZIS)をつくって公開しています。日本のハザードマップの事故バージョンといったところでしょうか。90年代の留学時代にこの事故リスク予防に関する会議がビジネススクールで行われており、院生として参加させて頂いていましたが、事故のワーストケース、それ以外の代替的ケースの想定とオフサイトへの影響、テロ対策等、様々な議論に時間をかけていたように思います。あれから15年以上たち、アメリカで引き続きITと空間情報の活用が環境・安全規制の枠組みに採用されていると感じます。
(残念ながら日本の環境情報には緯度経度データがないため、空間分析が大きく後れを取っているようです。)
別途4月には、アメリカ環境保護庁(EPA)では、住宅環境情報のデータベース化に関する規則案が公表されました。汚染責任が厳しい米国でも戸建住宅の所有者には、土地の汚染に関して一定の免責規定がありますが、今後、住宅における汚染懸念や対策の必要性を判断することなどを目的に、住宅での環境調査結果をGIS上にデータベース化する方向性が示されています。
このほか、環境汚染予防のために、電子データを残す仕組みとして、廃棄物の不法投棄を予防するために運搬車両へのGPS搭載義務化ルールもアジアなどで広がりつつあるようです。
この4月から中国の陕西省でも固形廃棄物の運搬車にGPSの搭載が義務化されているほか、タイでも今年7月までに、有害廃棄物の運搬車にGPSを搭載することが義務付けられます。台湾では早くから有害廃棄物の運搬車にGPS搭載が義務付けられて、今は9,000台近くの車両にGPSが搭載されているようですが、違反も多く、登録車両以外を使用しているとトレースできないとのことです。ちなみに日本でもPCB廃棄物や除染では運搬車両にGPS搭載が進められています。
電子化で問題がすべて解決できるわけではありませんが、作業の効率化や紙の削減だけでなく、これまでできなかったデータの分析が可能になり、また記録が残ることによる改ざん防止の効果もあるでしょう。環境データの信頼性向上にも役立つのではないかと思います。
*データの電子化については有用な部分は多いと思いますが、日本では、公開される情報に対する社会的な許容度が低くなってきているようなので難しい判断もあるように思います。ちょうど昨日読んだ建築家の隈研吾さんの対談本に現場と理想(夢)のバランスについて日本の大人の成熟した表現が書かれていました。ファンダメンタリスト(原理主義)ではないというお言葉にも(大)賛成です。
**最近の海外の法制化アップデート情報をもとに、関連する環境情報電子化・IT関連の動きを拾ってみました。体系的な情報となっておりませんので、ご了承頂ければ幸いです。