廃炉後の環境浄化に関する各国の事情

昨日の日経一面トップに廃炉の人材育成について掲載されていましたが、OECDから今年公表された報告書”廃炉におけるサイト浄化と保全”について簡単に紹介させて頂きます。2014年に発行されたレポートで、原子力サイトの閉鎖後の浄化について、各国共通の課題やケーススタディが詳細に示されており、興味深い内容が多く含まれています。文末に本報告書のリンクを紹介していますので、詳細は原文をご確認ください。写真や図表も多数あり、見やすい報告書です。

調査対象となった十数か国においても、廃炉後のサイトの浄化目標や考え方は異なっていますが、課題など共通する部分も多いようです。

【各国の原子力サイトの浄化目標】

ケースバイケース・・・ベルギー、カナダ、スペイン等

10μシーベルト/年を目安とした浄化と土地の再利用・・・イギリス、イタリア、オランダ

制限なしの土地利用をめざした浄化・・・ドイツ

汚染の完全な除去(土地利用による)・・・フランス

費用効率の高いリスク削減、土壌地下水浄化・・・アメリカ

もともと各国の土壌・地下水汚染浄化基準は、日本と異なるリスクベース方式ですので、基本的にはサイト別のリスク評価になるのでしょう。その大部分は産業用の利用として土地利用制限を課すものとしています。

また、浄化の進捗や時期について、以下の3つのテーマが主要な課題となると示されています。

・サイト解放レベルに関する合意
・資金源
・廃棄ルートや貯蔵場所の不足等

これまで廃炉が行われている米国、ドイツでは、廃炉に伴う環境浄化を行うエンジニアリング会社や請負会社が多く、リスク評価やプロジェクト管理が進んでいることが指摘されています。

また、報告書のサマリーにもあるように、長期にわたる浄化プロジェクトにおいて情報管理の重要性が示されています。数十年に及ぶプロジェクトですので、技術的な側面と費用や法的な手続き等もすべて電子的に管理する仕組みが不可欠になってくるでしょう。大きなチャレンジではありますが、日本の技術やプロジェクト管理が活かせる仕組みを構築できれば、今後世界でも増える原子力サイトの保全や再生にも貢献できるようになると思われます。

上記を含め放射性物質の浄化や環境リスク管理等に関する海外文献やレポートは、弊社サイト内のリストに入れておりますので、ご関心がある方はご参照ください。