5月1日に不動産鑑定評価基準が改正され、今年の11月1日から施行されます。
土壌汚染の座談会でも話題にあがりましたが、今後、国際評価基準(International Valuation Standards, IVS)に近い形で、土壌汚染に関する一定の条件付で不動産鑑定評価ができることが明示されています。
ただし、条件を付しても利用者の利益を害するおそれがない場合に限るとされており、その例示として、「損失が保険等で担保される場合」「財務報告で引当金が計上される場合」「不動産の売買契約等で、契約条件としてその内容が付記される場合」等が示されています。
上記を考えると、たとえば、土壌汚染があっても、売買契約にその特約がある場合や、別途引当金が計上されている場合、その調査や浄化にかかる支出に対する保険がかかっているような場合には、土壌汚染が浄化された(又はない、あるいは封じ込めてある等)として鑑定評価できるようになるということでしょう。
ご参考まで、今回の改正の前から、以下のように土壌汚染の有無及び状態については、不動産鑑定評価において適切に確認等することになっています。基本的には法的義務があるか、過去にあったか、過去に土壌汚染の除去をしたかなどが明示されており、昨年改訂されたASTM E1527-13の結論の考えに通じるところがあるような気もします。
ただ、以下の③にあるような、過去に区域解除が行われた土地について、情報収集が可能かどうかという課題も指摘されています。
≪不動産鑑定評価基準運用上の留意事項≫ 国土交通省 2014年5月1日改正より引用
*以下は今回の改正以前から規定されています。
土地に関する個別的要因
≪土壌汚染の有無及びその状態について≫
土壌汚染が存する場合には、当該汚染の除去、当該汚染の拡散の防止その他の措置(以下「汚染の除去等の措置」という。)に要する費用の発生や土地利用上の制約により、価格形成に重大な影響を与えることがある。
土壌汚染対策法に規定する土壌の特定有害物質による汚染に関して、同法に基づく手続に応じて次に掲げる事項に特に留意する必要がある。
① 対象不動産が、土壌汚染対策法に規定する有害物質使用特定施設に係る工場若しくは事業場の敷地又はこれらの敷地であった履歴を有する土地を含むか否か。なお、これらの土地に該当しないものであっても、土壌汚染対策法に規定する土壌の特定有害物質による汚染が存する可能性があることに留意する必要がある。
② 対象不動産について、土壌汚染対策法の規定による土壌汚染状況調査を行う義務が発生している土地を含むか否か。
③ 対象不動産について、土壌汚染対策法の規定による要措置区域の指定若しくは形質変更時要届出区域の指定がなされている土地を含むか否か(要措置区域の指定がなされている土地を含む場合にあっては、講ずべき汚染の除去等の措置の内容を含む。)、又は過去においてこれらの指定若しくは土壌汚染対策法の一部を改正する法律(平成21年法律第23号)による改正前の土壌汚染対策法の規定による指定区域の指定の解除がなされた履歴がある土地を含むか否か。