インドの会社法改正法案とCSR

今週は国会が閉会し、環境関連では、放射性物質を大気汚染防止法や水質汚濁防止法の規制に含める法案などが成立しました。*環境省関連の法案制定状況はこちらから。

今年は、先月のGRI:G4に加え、統合報告ガイドラインも発行される予定となっており、法律だけでなく様々なCSRのルールが更新される予定となっていますが、アジアではCSRに関する法改正や制度変更の取り組みも活発になっています。

インドでは、昨年制定された上場企業への規制のなかで、上位100社に対して、今年度からCSR報告書の作成を義務付けられるようになっていますが、さらに、会社法を改正して一定規模以上の企業に対してCSRの推進を義務付ける方向性が具体化してきています。

昨年インドの下院を通過して、1956年以来の大きな改正になるといわれているインドの会社法の改正版(The Companies Act 2012)では、一定規模以上のインド国内企業すべてに対し、社内にCSR委員会を設置してCSR方針を制定して開示し、毎年、前年の純利益の2%をCSR方針に沿った環境保全、機会均等、教育などの取り組みに使うことを求めており、その支出の実行ができない場合には理由を開示することとしています。

今年度末頃まで上院を通過して制定する方向という見方もあり、改正法が制定されれば、インドで活動する国内外企業へ一定の影響がでてくるといわれています。法案はこちらの135 Corporate Social Responsiblityの項目などに記載されています。

海外グループ会社がある場合や今後の進出予定、主要なサプライヤーの評価など、関連業務がある方々は当面注視が必要になりそうです。

 

 

 

 

 

住宅ローンの評価から省エネ住宅の普及推進:SAVE Act(法案)

住宅の省エネ化における補助金などの公的支援は国内外で一般的な政策ですが、米国で今月初めに上院に再提出された法案では、直接的には税金投入ではなく、住宅ローンの評価の手続きに電気代などエネルギー支出の情報を考慮することを求めることを通じて、市場での評価を促す仕組みを作っていくことを目指しているようです。

省エネ住宅の推進に向けた法律;Sensible Accounting to Value Energy Act (The SAVE Act)は、住宅ローン評価のガイドラインを管轄している住宅都市開発省(Department of Housing and Urban Development, HUD)に、以下の3つの要素を含め、住宅のエネルギー報告の提出を推奨する新たなガイドラインを発行することなどを規定する法案となっています。

①金融機関が、期待されるエネルギー費用の削減分を、その他の支出から控除し、借り手の返済能力を評価する際に組み入れること
②期待されるエネルギー費用の削減分は、現在価値として評価すること
③金融機関は、省エネ住宅のコストと便益を住宅ローンの申込者に提示すること

法案及び関連情報はこちらにまとめられています。

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住宅の環境リスク調査

5月下旬に参加させていただいた富山大学のシンポジウムで、住宅における環境リスク調査の必要性が提唱されており、海外での動向について少しコメントさせて頂きました。

アメリカではラドンやアスベストに関する情報開示ルールが州別に適用されているところがありますが、最近でもこれらに加えて、敷地内の地下タンクや有害物質の漏えい(土壌汚染)などを含めたProperty Condition Reportを住宅取引に義務付ける州もでています。 続きを読む

アメリカ:融資時の環境リスク評価:環境専門家にはプロフェッショナル保険が必要

サンフランシスコで行われたEnvironmental Bankers Associationの会議に米国の中小企業庁Small Business Administration (SBA)の環境リスク管理の責任者と地域の担当官が計3名参加して、2013年3月から施行されている融資時の環境リスク評価プロセスについて説明をしていました。(ご参考

発表内容の大部分は、公表されている文書に記載されているものですが、実際に話を聞くと見落としていた部分などが明確になり、あらためて勉強になります。

会場に参加している金融機関の環境リスク管理の担当者の反応が大きかったのは、SBAのガイドラインに基づき融資時の環境リスクの調査(いわゆるフェーズ1調査やフェーズ2調査)を実施する環境専門家(Environmental Professional, EP)に求められるプロフェッショナル保険についてです。 続きを読む

米国のクリーンエネルギー:シェールガスで若干Slow Down

最近発行されたいくつかのビジネス誌でも、米国のシェールガス革命によってオバマ政権が進めてきた再生可能エネルギーの推進への影響がでていることが考察されていましたが、オバマ政権の第一期でエネルギー省長官をつとめたSteven Chu氏も、同様のコメントをしています。

Chu元長官は、ノーベル物理学賞を受賞した研究者で、以前に在籍していたスタンフォード大学に戻ったところを、サンフランシスコの地元紙(クロニクル)がインタビューしていました。 続きを読む

協議会の設立ラッシュ:スマート・シティやM2M

スマートシティや建物データのクラウド管理などでは、業界横断型の取り組みが必要なことから、海外でも主要企業などが集まる協議会の設立が多くなっているようです。

先週 アメリカでIBM, GE, Microsoft、Bechtel、AT&Tなどが主要メンバーとなっているスマートシティを普及するための、smart cities councilが発足しています。メンバーには欧米の機器メーカー、ITベンダー、建設・エンジニアリングのほか、自治体など公的組織や米国グリーンビルディングの格付けであるLEEDを管轄するUS Green Building Council等、主要な非営利組織などもアドバイザーとして入っており、スマートシティの主要なプレイヤーや関係者がこうした多分野にわたっていることを垣間見ることができます。アメリカだけでなく、イギリスやフランスのほか、インドや韓国の組織や大学も参画しているようです。

また、イギリスではオラクルやドイツテレコムなどによる International M2M Councilが設立され、欧米を中心に活動を始めているようです。M2M市場は、2012年時点で約12兆円の市場が、2020年までに約10倍になることが予想されており(様々な市場予測があるようですが、年率20%くらいで成長するという見方は概ね共通しているようです)、特にエネルギー、交通、建物、農業などの分野で成長し、CO2をはじめとする環境負荷の低減に大きく役立つと考えられています。

国内でも建設会社から建物全体のデータのクラウド管理サービスが始まっているようですが、そのサービスの対象になる環境配慮不動産の普及を進めるため、社団法人環境不動産普及促進機構が今年初めに設立し、先日Webサイトがオープンしています。

同機構は環境不動産の普及に向けた調査などを進めるとしているように、建物を含むM2Mにおいてもパフォーマンスデータや、指標が不足していることが普及の課題になっているようなので、今後実務にも活用できるデータが蓄積・公開されることが期待されます。

シェールガス開発成功の背景(その2)

先日書いたその1の続きです。

シェールガス開発成功の背景としてもう一つ重要な役割を果たしてきたのが、1980年代から技術開発を続けてきた民間企業Mitchell Energy&Development (以下、Mitchell Energy)です。

Mitchell Energyは、シェールガスの父といわれるGeorge Mitchell氏によって設立され、テキサス州Barnett Shaleで最初に水圧破砕を実施しています。 続きを読む

シンガポールのエネルギーマネジメントシステムと電子報告

シンガポールで4月22日から施行されたエネルギー保全法(the Energy Conservation Act, ECA)により、同国内の170社、200の施設でエネルギー管理計画の策定し、エネルギー管理者を指名するとともに、エネルギー使用状況等を来年(2014年)から提出することが義務付けられるようになります。

日本の省エネ法に似た仕組みですが、エネルギー使用量などの報告は、同法の指定するオンライン報告システムのサイトに電子提出することとなっており、自社内のエネルギー使用・購入記録など保管記録があるデータについても、電子フォーマットでの記録でよいとされています。これによりエネルギーマネジメントソフトの導入も増えるのではないかいう見方も出ています。

分野や呼び方は様々ですが、アジアでも電子報告は広がってきていますね。

 

 

 

GRI G4によるCSR情報の経営上の意味—重要(Material)情報の開示に向けて

GRIの新たなガイドラインG4では、ガバナンスやサプライチェーンなど、開示項目の拡充だけでなく、開示するCSR情報の重要性(Materiality)について重点が置かれており、CSR情報の経営上の位置づけについて、改めて留意する時期にはいってきたといえそうです。

G4では、各社が自社の事業にとって重要性の高い項目を選定して報告する形となっています。重要性が高い情報は開示し、重要性が高くない情報は開示する必要はないという仕組みになっています。このため、重要性を評価するための指針が、260ページ超のマニュアルの160ページにわたり項目別に記載されています。

ここで企業が自社にとってMaterial (重要な)項目を評価し、開示することに伴う、CSR情報の経営上の意味について考えてみたいと思います。

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CSR調達:バングラデシュ惨事後の安全対策の合意

バングラデシュのダッカ郊外の建物崩壊における犠牲者は1,100人を超え、建物の安全管理に関する課題を改めて考えさせられる惨事でしたが、欧米の衣料品ブランドをはじめとするグローバル企業によって検討されていた調達先への対策は、5月中旬に以下合意として発行され、現在では署名企業が40社を超えています。

合意された安全対策”Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh”では、署名企業の同国内の全サプライヤーを対象に、安全監査や対策の実施割合などを厳格に定めており、ILOやドイツ国際協力公社(GIZ)等と連携して同国の労働雇用省(Ministry of Labour and Employment of Bangladesh, MoLE)と共に、建物安全対策を推進していく内容となっています。

署名企業からも推察できるように、欧州系の企業が多くなっており、米国企業ではこの同意書には参画せず、別途自社内での取り組みを推進することなどが報道されています。

上記合意には具体的な数値割合なども含まれているため、経営や実務への影響も大きく、各社で異なる経営環境の中、短期間で合意するのは難しさもありそうです。

 

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