建物のグリーン化を進める制度や政策は、世界中で広がっていますが、アジアではシンガポールが世界的な認知を広めつつあるようです。グリーンビルディングを推進するシンガポールの管轄行政であるBCA (Building and Construction Authority)は、建物のグリーン化を推進している組織として欧米以外で初めて、アメリカの省エネ推進団体(Alliance to Save Energy)から表彰を受けています。
2005年から始められたシンガポールのグリーンビルディング認証「Green Mark」は、初年度17棟だったものが、2013年には認証数が1,700に近づき、シンガポール国内だけでなく、インド、中国、マレーシア、中東などシンガポール外にも約30の認証があるということです。4分類の最高位にあるプラチナ認証の建物も2012年に100を超えたということで、認証された建物のリストや検索方法も、リストと地図の両方で検索できるなど、わかりやすい表示になっています。
都市国家であるシンガポールでは、建物のエネルギー消費が、エネルギー消費全体の40%を超えており、持続可能な都市づくりに向けてグリーンビルディングを推奨しています。特に、国の長期戦略として2030年までに建物の80%をグリーンビルディングにするという目標も評価されたようで、この目標のもと、新築のほか、既存の建物の改築によるグリーンビルディングの義務化も進めています。
「Green Mark」の評価や認知が広まっている要因は、対象を柔軟に設定しつつ同じマークを使用する一貫したブランド戦略と、グリーンビルディングに関わる専門家を育成する充実した教育制度にもありそうです。
Green Mark は、当初は日本のCASBEEと同じように、住居や非住居の建物認証だけでしたが、今では、建物全体だけでなく、建物内のオフィス、レストランや小売、スーパーマーケット、データセンターの認証に加え、建物以外で公園やインフラまで認証する仕組みになっています。それぞれの評価方法等がWebからダウンロードできます。
確かに、フランチャイズ展開をしているサービス業や、大企業の支店などでは、省エネやリサイクルを重視した拠点・店舗展開をする際に、一棟全部よりもテナントとしての認証があれば使い勝手がよさそうです。また「Green Mark」という一つの認証を活用することで、認証数も増加し、アメリカのLEEDと同様にグリーンビルディングとしての認知にもつながり、シンガポールの”環境ブランド”を高めているのでしょう。
もう一点は、このグリーンビルディングを設計、管理する専門家の人材育成にも力を入れていることです。設計や施工のエンジニアとしての教育だけでなく、グリーンビルディングを管理する不動産管理者としての資格(Green mark マネージャー、プロフェッショナル、ファシリティ・マネージャー)を整備して、資格者を公表しています。また、当局が主催するBCAアカデミーでは、研修コースを設計し、個別の研修コースを組み合わせて、学位まで取得できるようになっています。フルタイムのコースを完了すると、ISO9001, ISO14001などの修了証ももらえるものもあるようで、なかなか魅力的なコースになっています。
先日のセミナーでご紹介した環境デューデリジェンスを含め、グリーンビルディング、さらにそれらの管理スキルなどは、大学などの授業としてはまだ行われていない一方、実務としては即戦力になる内容ですから、社会人でもブラッシュアップとして受講したいという方も多いでしょう。日本でもこうしたプログラムがあるとよいですね。