シェールガス開発に関わる環境リスクと訴訟の動向

アメリカで拡大しているシェールガス開発については、環境汚染の懸念があることはよく知られていますが、最新動向について米国内での遠隔会議に参加する機会がありましたのでお知らせします。

一部に地下水汚染や揮発性物質の大気への漏出などが懸念されていますが、「シェールガス開発だけが、他のエネルギー、または天然ガス開発に比べてとりわけ環境リスクの懸念が大きいというものではない」というのが識者の共通認識になりつつあるというコメントがありました。つまり、一定の化学物質等を使用する産業活動には環境リスクはつきものであり、その環境リスクの管理は必要であるということです。この環境リスクの管理において、現状では実務上、州の規制が中心的な役割を果たしているが、連邦規制として国全体に規制するのかどうかはまだ検討段階であるということでした。ただし、規制そのものは増える傾向にあり、地域によるニーズも異なり、ビジネス運営上のリスクになる可能性はあるだろうという見解でした。

また、訴訟については、比較的小規模な住民訴訟はでているようですが、それ以外に今後増える可能性があるものとしては、以下の二つが挙げられるということです。

1)企業秘密として保護されている化学物質情報と情報開示規制やその適用に関するもの

2)シェールガス開発(フラクチャリング、フラッキング)に関わる保険の適用範囲(免責範囲)に関するもの

上記に関する訴訟はすでにいずれも事例が紹介されていました。

2)については、環境保険の対象範囲として新たな物質や活動が出てくるたびに必ず訴訟になるもので、たとえば数年前は毒性のカビであるモールド(Mold)が話題になっていましたし、揮発性物質(Vapor Intrusion)などもかつてよく話題に挙げられていました。これは、環境保険が補償範囲における訴訟が多く、難しいビジネスといわれている背景の一つでもありますが、すでにシェールガスに関しても請負事業者と大手保険会社との訴訟がでているというのは興味深い事実です。

上記に関する講演者の執筆した以下文献には全体がわかりやすくまとめられています。

http://www.dechert.com/files/Publication/5294df75-27a2-4b6a-85d5-8845bc9981ec/Presentation/PublicationAttachment/58d28450-f213-42df-a7b9-8b57bc67846a/John%20IX%20Abbi%20COHEN%20BNA.pdf