不動産関連の方はご存知の方が多いと思いますが、8月初めに国土交通省から”不動産における国際展開戦略”の方向性が示されました。その中にも記載されているように国際的な評価基準を踏まえて、不動産鑑定評価基準が改定される議論が進められています。
このなかで土壌汚染のある不動産の評価について、一部変更が予定されています。
国土交通省の委員会資料によると、「IVSで導入されているスコープ・オブ・ワークの概念をもとに、土壌汚染等の特定の価格形成要因について、一定の要件の下で依頼者と合意することにより、不動産鑑定士が実施する調査を合理的な範囲内で可能とする条件を新たに導入」との記載があります。(*IVSは、International Valuation Standards, 国際評価基準)
上記Webに掲載されている改訂案の新旧比較をみても、いくつかの文言が追加されているだけので、まだ実務的にどのような影響があるのかわかりにくい状態です。ただ、これにより今後土壌汚染に関する一定の条件やシナリオが妥当と認められ、その条件に基づく評価が行われるようになれば、現実的な土地利用の実態を反映した評価が、より広く行われる可能性もあります。具体的には、現在の「土壌汚染が全くない状態」と「土壌汚染を完全に除去した状態」という典型的な2つの状況だけでなく、土壌汚染の拡散防止措置など管理をしながら使用するといった状態における対策費や維持管理費の将来キャッシュフローから現在価値を評価に組み入れる手法も広がるかもしれません。
現在、不動産鑑定評価における土壌汚染の取り扱いについては、2004年(平成16年)に発行された”土壌汚染にかかわる不動産鑑定評価以上の運用指針Ⅱ”のほか、財務諸表における評価の際のガイドラインなど、いくつか技術的な実務ルールが記載されています。
鑑定評価基準の今後の改訂スケジュールは明記されていませんが、影響のある改訂になりそうです。