GRIの新たなガイドラインG4の発行や、今年末に予定されている統合レポートのガイドラインなどの方向性を受け、CSRレポートの改定や、環境報告書(環境・社会報告書など)の内容や構成の見直しを検討している企業が増えているのではないでしょうか。
企業価値に占める無形資産の割合は、過去30-40年で大きく増え、企業価値の8割が無形資産から評価されるようになってきています。一方、従来型の財務報告では、十分に無形資産が説明・開示されていないため、CSRレポートをはじめとする非財務情報の重要性は増しています。
欧州の投資家からみた非財務報告書の現状や課題、期待するものについてまとめられた報告書が公表されました。投資家に対しても評価されやすいCSRレポートを作成するのに参考になりそうです。
報告書では、現状の非財務報告は不十分であるというメッセージが一貫して示されていますが、そのなかでも非財務報告として「最も参考にするのは、各社のCSRレポート」ということで、統合レポートなどが定着するまで当面は、CSRレポートは重要な情報源であることは間違いなさそうです。
また、本調査によると、欧州委員会が今年4月に発表した非財務報告の義務化法案に記載されている内容に加えて、以下の内容を開示することを期待しているとのことです。
(欧州委員会の非財務報告義務化については、こちらをご参照ください)
≪欧州委員会の法案の開示項目≫
・環境問題
・社会・労働問題
・人権
・汚職・贈賄の防止
≪追加的に開示が望まれる内容≫
・コーポレートガバナンス
・サプライチェーンの影響
・各社個別の内容
・業界個別の内容
投資家としては、業界内での企業間の比較がしやすいように、より使いやすいガイドラインを望んでいるようです。また、96%のアンケート回答者がKPIs (Key Performance Indicators)が必要と回答しているとのことでした。確かに、本業からも企業のCSR方針からも、説明可能なKPIを設定し、管理することができれば、シンプルで、わかりやすいCSRレポートが作成・開示できるようになります。
以前に、大学の授業を持っていた時によく話したのですが、KPIは実際の経営指標とリンクしていることが多いので、(また経営と関連していなければ意味もないので。。)有価証券報告書や決算短信の事業の概況やリスク情報と関連する内容があるとわかりやすいかもしれません。
企業価値に直結するSRI(社会的責任投資)の規模は、日本ではまだ小さいですが、21世紀金融行動原則に署名する金融機関も増えています。株高の流れと共に、社会の問題を解決する企業へ投資・融資が増え、その企業がより成長する循環が日本でも増えるとよいですね。