数十年にわたり化学物質などを使用して操業していた工場で、土壌汚染があるかどうかは、国が違っても大きな違いはないようです。
6月に参加したアメリカの会議では、米国の製造・サービス業などで、設備・施設別に、操業年と土壌汚染の関係を調査した研究結果が紹介されました。
調査目的のひとつは、”操業の長さと汚染の発生率に相関関係はあるのか”というものでした。つまり、長く操業している工場には土壌汚染がある可能性が高いのか、という問題提起です。有害物質を使用していた工場などでの汚染発生確率は、施設の種類別に若干相違があるものの、だいたい50-70%(基準超えは30-50%)という発表でした。
また、操業期間と土壌汚染の発生率との相関関係はあまり明確にはでていないという考察でした。(地下水汚染については操業期間の長さが影響するという結果がいくつかありました。)この調査は、比較的小さな統計母数でしたが、土壌汚染の発生確率について、日米でほぼ同じくらいの確率になっているのは興味深いものでした。
日本で同じ目的の研究はみていませんが、日本のデータとしては、土壌環境センターで資料調査後(つまり有害物質を使用していた履歴などがあることが確認された後)に実施された土壌調査では、基準を超える汚染が発覚する可能性は50-60%程度です。(これについては、数値だけの紹介ですが、以前の講演資料に入れています。)
また、以前環境省のブラウンフィールド調査で実施されている、都市計画地域の用途別に東京都のデータをベースにした土壌汚染の発生確率では、工業専用地域では約35%となっています。
発生確率が高いかどうかについては、いろいろな見解があると思われますが、むしろ残りの3-4割にあたる工場では、長年にわたり操業を続けながらも汚染が発覚しなかったことは有益な数字であるように思います。
アメリカの会議では、金融機関の融資時のデューデリという点で、汚染を踏まえた評価の重要性がコメントされていましたが、環境マネジメントという点では、3-4割にあたる汚染がなかった工場の運営の特徴を捉えることで、環境管理のベストプラクティスも導くことができるのではないかと思われます。環境管理の優れた企業は、他の経営面でもよい結果がでてくるのではないでしょうか。
日本でも過去に大手金融機関が発表している内容では、土壌汚染によって、担保評価を市場価格より10%程度減額しているようですが、一物件あたり平均9,000万円の減額で、500万円~10億円の範囲であるということですので、それなりに大きな影響があります。
よい工場のベストプラクティスを探ることで、リスク軽減や評価の減額が少なくなり、予防的な経営手法が確立されれば、日本だけでなくこれから課題となっているアジアでの汚染防止にも役立ちそうです。