4月のバングラデシュの建物倒壊事故後、欧州企業が5月に今後の対応に関する同意を発表しましたが(以前のブログご参照)、先週アメリカ企業が”The Alliance for Bangladesh Worker Safety“と呼ばれるアライアンスを発表しました。
GAPやL.L. Beanなどの衣料品ブランドのほか、Sears やMacy、Nordstromなどのデパート、Walmart等に加え、カナダの企業や団体のほか、香港ベースの企業も参画予定としています。今後、バングラデシュの工場に対して年1回の監査をすることとしており、実施内容そのものは欧州のAccordと同じようですが、法的な位置づけではなく自主的な取り組みという形で推進しているところが、欧州のAccordとの相違だといわれています。
バングラデシュの惨事は、1,100人を超える犠牲者を出す大惨事となり、経済活動がグローバルに拡大するなかで、サプライチェーンについての様々な課題が議論されてきています。
イギリスのWorld Textile Information Network (WTiN)によると、バングラディッシュで労働安全や火災の基準を満たす繊維・衣料品会社は、全体の3-4割であるといわれています。今回のような大惨事により、政府の規制や企業の取り組みなどが改めて見直されはじめました。欧米企業では、サプライヤーに下請け先までの情報開示を厳格に求める方向性を打ち出す企業もあり、今後、これらの要件を満たせない現地企業は受注できずに、企業の統合や再編なども行われる可能性が指摘されています。さらに、大手ブランド企業が生産拠点を他国に移転するなどの動きが加速すると、従業員の雇用にも影響が出てくる可能性もあります。
このバングラディッシュの繊維・衣料品業界は、安価な労働力に支えられて急拡大してきました。1980年代半ばには400弱であった工場が、2012年には5,400まで増え、その雇用者は400万人に上り、国全体の輸出の8割を占めるようになっているといいます。同国の月額の最低賃金は37ドルで、中国の204ドル、ベトナムの120ドルに比べても数分の一であり、その大部分は、農村部から働きに来る女性労働者であるといわれています。
今回のような大惨事があると、様々な課題が露呈され、結果として現地の雇用や労働者に深刻な影響をもたらしていることは、問題の難しさを改めて感じさせます。
アパレル業界では、5月に中国の環境保護部が公表した有害廃棄物や廃水に関する違反企業56社の社名公表に関連して、繊維の染色の3割にあたる生産量をもつ浙江省の染色工場の閉鎖による影響も懸念されています。
今回はアパレル業界に関連するサプライチェーンの課題が重なりましたが、それ以外の業界にとっても重要な課題提起であると同時に、欧州と米国企業の取り組み方について、あらためてその違いを知る機会にもなりました。日本企業独自の取り組みは、現時点では公表されていませんが、欧米のいずれかの取り組みに参画する企業も出てくることが予想されます。米国系企業が発表した取組みのほうが、自主的な取り組みとして日本でも受け入れやすい印象ですが、また欧州と米国それぞれの取り組みも、いずれ調和した仕組みがでてくるかもしれません。
CSR関係だけでなく、責任投資の分野でも様々な意見やアクションが出てきています。
また、直接の関連はありませんが、来週、アメリカでCSR調達を進める州立大学や地方自治体の協議会Sustainable Purchasing Leadership Councilが公式に発足するようです。パソコンメーカーやオフィス用品、物流、清掃や廃棄物処理関連のサービス関連企業も入っています。民間企業から、大学や自治体にもCSR調達の動きが広がりつつあります。