週末の日経ヴェリタスに欧米年金基金からの投資マネーを獲得するために、国内のREITや不動産会社でESG評価を受ける会社が増えているという記事がでていました。グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク(GRESB)2013年は、昨年の24社から30社強に広がる見通しということで、海外での責任投資の動きが国内の不動産市場にも広がりつつあるようです。国土交通省での紹介資料はこちらにあります。
このGRESBの地域別参加会社は欧州が過半を占めているように、2009年から欧州で始まった民間の枠組みのようですが、GRIやCERESなどグローバルな組織や、グリーンビルディングカウンシルなど米国やオーストラリアの組織も参画しています。
2013年の調査内容(Survey)をみると、環境面では、エネルギー利用、水利用、廃棄物、土壌汚染のほか、米国で課題となっているカビ(Mold)などのリスク管理項目や、スマートグリッドの導入割合、サプライヤーや工事請負会社のサステナビリティに関する状況などが調査項目に入っています。エネルギーのパフォーマンス項目だけで18項目あり、全体では20ページのアンケート調査ですので回答そのものもたいへんそうですが、物件毎の個別要素が強い不動産全体の状況が把握できれば、投資や管理する側としても新たな発見や評価軸もでてくるのではないでしょうか。
先月参加したEnvironmental Bankers Associationの会議でも、2日目のランチミーティングで、GRESBのExecutive Directorでマーストリヒト大学の准教授がプレゼンをしていました。米国内では、不動産の環境リスク調査については長い歴史があるため、CO2や水利用などの環境側面に加え、社会面やガバナンスをいれたESGを評価するGRESBの枠組みは比較的新しい取り組みという位置づけで紹介されていました。米国でもガソリンスタンドや中小工場では、融資の際の環境チェックなども、厳格な実施はこれからという状況という議論があったため、GRESBの調査に含まれるような、ESGの全般的な項目まで評価できるのは大規模な不動産や不動産会社、投資法人等からということになるのでしょう。様々な基準がある中で、どのような基準や仕組みが普及するのかはわかりにくいですが、大きな方向性という面では、不動産セクターでもESG評価・責任投資が拡大する方向になると思われます。
日本での拡大の背景も、海外投資家からの「投資マネーを獲得」のためということで、やはり市場からの影響力は大きいですね。