住宅の環境リスク調査

5月下旬に参加させていただいた富山大学のシンポジウムで、住宅における環境リスク調査の必要性が提唱されており、海外での動向について少しコメントさせて頂きました。

アメリカではラドンやアスベストに関する情報開示ルールが州別に適用されているところがありますが、最近でもこれらに加えて、敷地内の地下タンクや有害物質の漏えい(土壌汚染)などを含めたProperty Condition Reportを住宅取引に義務付ける州もでています。

住宅取引に義務付けられるコネティカット州のフォーマットは、アスベスト含有建材、鉛塗料、ラドンなどの項目が入っていましたが、2012年の州規制により改訂され、地下タンクや有害物質の漏えい(土壌汚染等)が追記されるようになりました。(*フォーマットはまだ改訂されていない部分があるようです。改訂された規制内容はこちら)回答には”不明”の項目もありますので、不明のまま取引することも可能なのだと思われますが、これらの環境リスクを考慮したい購入者にとっては、事前スクリーニングとしては有用な情報となるでしょう。他の州では、モールド(毒性のカビ)などが含まれているケースもあります。

アメリカでは現在、商用取引で一般化している環境リスク調査について、揮発性の有害物質(Vapor Intrusion)の懸念から住宅市場へ広げることも提唱されていますが、イギリスでは、8割以上の住宅取引で環境スクリーニングが実施されているとのことで、関連サービスも成熟しているといわれます。

日本では宅建業法施行規則の改正により、2006年から建物のアスベスト調査記録がある場合及び耐震診断がある場合には、その内容を宅建事業者が重要事項に記載し、説明することになっています。一方、土壌汚染調査については、実務的には法人同士の不動産取引の一部で実施されているにとどまっており、また他の環境リスク等を含む建物状況調査(Property Condition Report)も加えたエンジニアリング・レポートは、REITなど特定の不動産を対象とするものに限られて活用されています。

法制化の時期が比較的遅かったことや中古住宅の流通について日本とは相違もありますが、上記のようなフォーマットと比べても、国内の住宅取引において環境リスクの情報は入手しにくい状況です。ただ、すでに国内でも環境問題への意識は高く、また環境リスクが不動産の価値にも影響することを考えると、個人にとって大きな買い物である住宅購入の際には、土地や建物の環境調査を実施したいという潜在ニーズは徐々に増えてくるのではないかと思います。住宅でも環境スクリーニングレポートを不動産取引に添付する仕組みやサービスが始まるといいですね。

 

 

 

 

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