シェールガス開発成功の背景(その2)

先日書いたその1の続きです。

シェールガス開発成功の背景としてもう一つ重要な役割を果たしてきたのが、1980年代から技術開発を続けてきた民間企業Mitchell Energy&Development (以下、Mitchell Energy)です。

Mitchell Energyは、シェールガスの父といわれるGeorge Mitchell氏によって設立され、テキサス州Barnett Shaleで最初に水圧破砕を実施しています。

RFFのレポートによると、Barnett Shaleで掘削した井戸数は、1981年から1995年までMitchell Energyが264であるのに対し、その他の会社はすべてあわせても20しかなかったとして、圧倒的な地位を占めていたのがMitchell Energyだといいます。一方、ほぼ同時期である1981年から1997年までに同社は合計2.5億ドルの研究開発投資をしており、その額は、同時期の利益の総額より多かったということです。

こうした継続的な研究開発を実施できた背景には、Barnett Shaleで開発を始めた1981年当時、Mitchell Energyはテキサス州北部最大の天然ガス生産者で、米国天然ガスパイプライン会社(Natural Gas Pipeline Company of America, NGPL)と市場価格よりもかなり高い固定価格での長期契約を締結していたことがあるといいます。同社は不動産業務なども展開する上場企業であり、比較的リスクのある研究開発投資ができる安定した財務状況にあったことは幸運なことであったと考察されています。

その後、ガス価格の下落や長期契約の改訂などで、投資継続における厳しい時期はあったようですが、Barnett Shaleからの供給量が同社の主要な供給源となっており、自社の天然ガス施設の稼働を満たす新たなガス源の開発のため、掘削を継続していたようです。

Mitchell Energyは、2002年にDevon Energyに35億ドルで売却されていますが、1980年代からシェールガス開発を進めた同社の粘り強い研究開発がなければ、今日のシェールガス・ブームはなかったとしています。企業内でも様々な課題を乗り越えてきたことが想像されます。起業家として長期にわたる力強いリーダーシップがあったのですね。

≪追伸≫

George Mitchell氏は、1970年代からテキサス州Woodlnadsの広大な土地に、著名なランドスケープ・アーキテクトであるIan McHarg氏とともに自然と共生する地域開発を進め、90年代にはUrban Land Instituteからも受賞しています。Ian McHarg氏はペンシルバニア大学の名誉教授で、環境と地域社会の調和するプランニングの考え方を提唱し日本語訳もある名著”Design with Nature”は、環境を学ぶ上で大きな影響を受けました。在学中、一度だけMcHarg教授の特別講義をうける機会がありましたが、様々な要素をレイヤーとしてとらえる考え方は、GIS(地理情報システム)によって実務的にも可能になっており、GISにはまっていた当時を思い出します。シェールガス開発の父と呼ばれるGeorge Mitchell氏は、環境やサステナビリティへの意識がもともと高かったということですが、McHarg教授とこんなつながりがあったとは、意外な発見でした。

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上記は、RFFのレポートhttp://www.rff.org/Publications/Pages/PublicationDetails.aspx?PublicationID=22177

をベースに以下のGeorge Mitchelについて書かれた書籍”How Mitchell Energy & Development Corp. Got its Start and How it Grew” (Joseph W. Kutchin著、2001)及びEIAレポート等を参考にしています。

 

 

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