シェールガスの自主情報開示に関する議論

シェールガス開発で課題となっている、使用する化学物質に関する自主的な情報開示プログラムに対して、先週ハーバード大学ロースクールから報告書が公表され、その位置づけ是非について議論されています。

すでに様々な報道や報告があるように、シェールガス開発の際には、大量に使用する水に微量の化学物質を添加していますが、これらの化学物質が地下水や廃棄物を通じて水質汚染などを引き起こすのではないかという懸念がでています。議会や環境NGO等からの要請を受け、地下水保全カウンシル(Ground Water Protection Council)と米州石油ガス協定委員会(Interstae Oil and Gas Compact Commission)が、2011年4月に化学物質の自主開示情報を登録するFracFocusというWebサイトを開設しました。

http://fracfocus.org/

このWebサイトでは、州/郡別、開発会社別に井戸の場所とそこで使用されている化学物質のCAS番号を表示することができるようになっていますが、上記ハーバード大の報告書では、この自主的な情報開示では、現在ある州の規制遵守においても不十分であり、連邦政府レベルでの登録システムを作ることが望ましいとしています。

これに対して、上記サイトの運営サイドでは、サイトと州の規制当局との連携などについて、ハーバード側が十分な調査をしていないことを反論するとともに、調査を詳細に分析してあらためて報告するとしています。

http://fracfocus.org/node/344

日本からみると、まずこのWebサイトには個別企業名を含めて大量の情報が開示されていることに驚かされますが、さらにこれらの情報開示の政策的役割について、建設的な議論が進んでいることも、シェールガス開発とその規制の影響に関する重要性を表しているともいえるような気がします。

この情報開示は、日本のPRTRにあたるアメリカのTRI(Toxic Release Inventory)*情報に似ている印象を受けます。しかし、当時から25年以上経過し、情報開示の手法も役割も大きく進化しています。情報開示する企業も積極的な情報開示を進めるようになっており、シェールガス開発の分野でも、企業が先進的な情報開示を進めています。他にもあるのかもしれませんが、以下のハリバートン社のWebサイトはデザインも含めてとても見やすく、先進的です。

http://www.halliburton.com/public/projects/pubsdata/Hydraulic_Fracturing/fluids_disclosure.html

 

*TRIはインドボパールでの大惨事から法制化されたEPCRA(Emergency Planning and Community Right to Know Act)のもとで制度化され、工場で使用されている化学物質の排出量と、事故のシミュレーションに基づく緊急時対策の開示を義務付けています。

**上記ハリバートン社のサイトにある101は大学の授業などで、一番初級のものをさすことから、”初級**”のようなものに”**101”という名前がついていることがあります。

 

*冒頭のハーバードロースクールの報告書

http://blogs.law.harvard.edu/environmentallawprogram/files/2013/04/4-23-2013-LEGAL-FRACTURES.pdf

 

 

 

 

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